2025年を迎え、ファッション界は新シーズンの開幕が近づいている。期待が高まるこの時期に、2025AWシーズンにデビューする新ブランド「べメルクング(Bemerkung)」が、一足早く展示会を開催した。
デザイナーの池田友彦は、約15年にわたりパタンナーとしてキャリアを積み、「コム デ ギャルソン(Comme des Garçons)」に8年間勤務。「コム デ ギャルソン オム プリュス(Comme des Garçons Homme Plus)」のパタンナーとして経験を積んだ後、2025年に自身のブランドをスタートさせた。
服作りのテーマは、「衣服のパターン構造と機能性を再解釈し、作業的にデザインしていくこと」。ブランド名は、ドイツ語で「注釈」を意味する単語に由来する。その名の通り、デビューコレクションには池田の技術と発想が随所に反映されていた。
展示会場に入ると、白い壁に絵画のように飾られた黒いTシャツが目に飛び込んでくる。黒い生地の上には、白い線で服のパターンが描かれていた。さらに奥へ進むと、裁断後のTシャツが何着も並び、身頃や袖のパターン状にくり抜かれた黒い生地が目に入る。
今回のコレクションは、すべてTシャツの形をベースにして作られた新しいパターンで構成されている。そのため、各アイテムにはTシャツの痕跡が残り、ベーシックな素材ながら異質な構造の服へと変化していた。裁断されたTシャツのタコバインダーはベルトループとして活かされるなど、余ったパーツにも新たな役割が与えられている。
ジャケットを羽織ろうとフロントのボタンを外すと、裾から体を通さなければ着られなかったり、Tシャツの半袖がそのまま残り、どの袖に腕を通せばよいのか迷う。しかし、その戸惑いを超えて袖を通すと、挑戦的なフォルムが姿を現し、ファッションの楽しさを再認識させてくれる。
贅沢な素材をシンプルな形に仕立てる服とは対極にあるコレクション。ありふれたアイテムと素材を用いながら、異端のカッティングによって生まれた服は、ミニマリズムやクワイエットラグジュアリーとは180度異なる世界の服だ。しかも、それが伝統を重んじるメンズウェアとして成立している。
ファッションとは挑戦であり、服には人間を変え、街を変え、世界を変える力がある。池田友彦の「べメルクング」は、着る者にファッションの原点を思い出させる。
Instagram:@bemer_kung