フラットデザイン、SNS、コンセプト

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AFFECTUS No.25

ファッションに限らず、デザインはその時代の中心となる産業やモノに大きく左右されていく。そういう意味で現代の中心はインターネットを中心とした業界で、一番大きな転機になったのはやはりiPhoneの登場だろう。

感覚的にシンプルな操作が特徴のスマートフォンの誕生と呼応するように、ウェブサイトのデザインが装飾やリアリティが重視されたリッチデザインから、スクロール重視で立体感を失った平面的なデザインに簡略化され、シンプルに変化していった。ウェブサイトの簡略化を押し進めたのが、Windows 8の登場である。これを機に、いわゆるフラットデザインがWindows 8のModern UIによって本格化する。ちなみにフラットデザインに関しては以下の本が読みやすく、おすすめだ。

『フラットデザインの基本ルール』佐藤好彦 著(インプレス)

現代の人々にとって、インターネットに触れない日はないというぐらいに、インターネットが世界に与える影響力は非常に大きい。日常的に触れているモノの感覚が変われば、それに触れている人々の感覚も否応なしに変わる。変わらないほうが難しい。一緒に住んでいる人がいたら、その人の影響は否応なしに受けるように。

フラットデザインが進行することで、世の中ではよりイージーで感覚的に楽しめるモノが好まれるようになった。写真をメインにしたInstagramの利用者が増加していったのも、そういう時代感覚の変化が一因しているのではないか。Instagram創業者のケヴィン・シストロムとマイク・クリーガーは、時代変化の感覚を正確に掴めたからこそ、世界中の人々が熱中するSNSを開発できたのかもしれない。

フラットデザインが流行という枠を超え、世の中にあるのが当たり前になっている今、人々の娯楽の中心は何だろう。スマートフォンだろうか、それともSNSだろか。僕の結論はクリエイティブ、つまり創造的な行為になる。SNSが時代の娯楽の中心と考えてもいいのだが、そこをもう少し突っ込んで本質を捉えてみると、クリエイティブではないかと思う。今は個人が自分の創造性をイージーな感覚で作りSNSを通して発表、そしてその反応を楽しむ時代となり、それが全世界で行なわれている。毎日世界中の人々がクリエイティブな行為を、国を越えて楽しんでいる。こんな時代は人類の歴史上初めてだ。

急激で巨大な時代変化に伴い、人々の価値観も当然変わってきた。例えば、2000年代はまだメディアの力が大きく、メディアに登場するモノやヒトに憧れを抱き消費が行なわれていた。しかし、今は違う。大切なのは、テレビの向こうにある遠くの憧れよりも自分の価値観であり、今、人は何よりも自分の価値観が大切で、自分がいいと思えるモノやヒトを自らウェブサイトやSNSで発見し、自分の価値観への共感を楽しんでいる。もちろん、自分の価値観に共感を得る楽しみは昔からあったが、現代ではインターネットやSNSの浸透と共により強く露わになってきた。

今、個人がクリエイティブを楽しむ行為はますます進行している。そして、個人がクリエイティブをより楽しめるように、これから次々に生まれる新たなSNSやアプリが手助けするはずだ。この時代の流れは止まらない。では、そういう時代にあって、必要になる価値観とはなんだろうか。

それは「自分らしくあること」だとは僕は考える。

自分の感性で自分らしいモノを作りアップし、そこに共感を得る。クリエイティブを楽しむには、自分らしくあることが大切だ。それをファッションで体現するなら、僕は“Good body, Good heart”を提唱したい。

服を着て、綺麗になることよりも、可愛くなることよりも、心地よくなること。その服は、もしかしたら綺麗さや可愛さを感じることはないかもしれない。しかし、着てみると非常に心地よく、自分の姿を鏡で見たらなんだか自分らしいと思える服。服の綺麗さや可愛いさで選ぶより、服を着たときの心地よさで服を選ぶ楽しみもきっとある。心地よさを感じると、人は自然と自分らしく振る舞える。服を着ることは、人からどう見られるかが大切だ。しかし、人の視線から離れて服を着る日があってもいい。心地よくて自分らしくいられる。そんなふうに服を着ることができた日の人間は、きっと魅力的に見える。

現代人の毎日は、テクノロジーの進化で便利になり、多くの新しい面白さが生まれ、体験できるようになった一方で、せかされ、せわしくなり、慌ただしくもなった。身体と精神への負担は、ますます増えているのが現状だ。こんな世界で、四六時中、豊かな気持ちでいることは難しい。

小説を読む、ドラマを観る、食事を美味しく食べる。毎日繰り返すありふれたことを、大切に続けていきたい。大切にしたいのは、特別な一日より繰り返されるありふれた毎日。背伸びをする必要はなくて、無理に自分を飾る必要もないし、友人とカフェでお茶をするようにありのままで。誰かになるのではなく、自分でいることの楽しさと心地よさ。もう、誰かに何かに、自分を投影する必要はない。あなたが、あなたらしくいられるように。

そんな心地よさを体感できる服が、世の中に増えたならと思う。

〈了〉

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