丁寧さが美しいネオンサイン

AFFECTUS No.62

先日、友人と共にネオンサインの2018AW展示会を訪れた。デザイナーは僕と同じ文化服装学院出身で、同級生でもある。しかし、僕は在学時の学科は異なり、デザイナーとの面識もないため、デザイナーと交流のある友人(同じく文化服装学院の同級生)の誘いで展示会へ行くことになった。そういう経緯もあり、ブランド自体のことはスタート間もない時期から知っていた。

しかし、実際に服を見たことは一度もなく、服を見たのはこの日が初めて。展示会を訪れると、ネオンサインのスタッフとして働く文化時代の同級生と出会った。文化の同級生たちと会うことは、自分にとって一番刺激を受ける時間だし、和む時間でもある。

話を服に戻そう。

ハンガーにかけられた服を見た瞬間、服に触れる前よりも早く感じる。良い服の匂いってやつを。

手を伸ばす。最初に触れたのはポロシャツだった。素材を指で撫でると、すぐさま素材感の上質さを感じ、漂ってきた匂いの正しさを確信する。

リブがリンキングで縫い付けられていて、素材の上質さと共に一手間かけて服を綺麗に作ろうとしている丁寧さが伝わる。その姿勢は他のアイテムにも及ぶ。特にクオリティの高さを感じたのはニットだった。それは単純にモノとしてのクオリティというよりも、デザインのクオリティとしてになる(もちろんモノのクオリティも高い)。

プリーツがかけられたように編み地に工夫が施されたリブに、デザインへの細やかな気配りが感じられる。他のアイテムでは、裏地にパンチングされた布地が使われていたり、小さなブランドロゴがさりげなくプリントされていたり、隠された細部へのきめ細かい遊び心に唸る。

全体をイメージする。シルエットを作り、チョイスする素材を検討する。そして、そのイメージへ沿うように細部の表現を一つ一つ検討し、ディテールをデザインする。口で言うのは容易だが、実際に行うことは簡単ではない。ましてや、その行為を何着にも渡って連続して行なっていくことは神経を磨り減らす消耗戦だ。デザイナーは、その作業の最終ジャッジをすべてのアイテムにおいて行う。そして、売上の責任を負う。そのジャッジが、働く人たちの生活も左右する。ブランドの命運を一身に背負い、多大なるプレッシャーと共に生きるのがデザイナーという職業だ。

OEMやODM、ファッション系スタートアップのサービスなどの存在によって、今や専門教育や専門的経験がなくとも服を作れる時代になり、服を作るハードルが下がったことで新しい才能を呼び込むことにも繋がった。そんな時代だからこそ、細部へ気配りをし、全体を破綻なくフィニッシュさせてジャッジを下せる目を持つことが、いっそう重要になってくる。こればかりは一朝一夕で身につくものではない。

その容易ではないスキルを証明していたのが、今回のネオンサインだ。

スタイリングはポップな色使いを組み合わせながら、ストリートとトラッドという二つのスタイルを「ユーモア」を橋にして繋げている。多彩な色のプリントワンピースに極端に着丈の短いトラッドテイストのベストを合わせたスタイルや、左右の足で色違いのヒールを履かせるなど、所々にクスッとする笑いが散りばめられていた。

トレンドのビッグシルエットも見られる。トレンドを取り入れ、ブランド流に解釈して形にすることは、服に時代感を匂わせるためにも重要なアプローチだ。

服を着ることは時代を着ること。そのために服には時代の匂いを漂わす必要がある。モノとしての良い服と商品としての良い服は、往々にして別になることがある。時代の匂いがなければ、消費者の心には響かない。「着たい。欲しい」。そう響かせるには、トレンドを取り入れることが必須となる。

トレンドの取捨選択と解釈にその具現化。それらもデザイナーの重要スキルだ。服を「カワイイ」「カッコイイ」と判断しているだけでは、なかなか身につかない。これまでのデザインの流れ、そしてこれから進んでいくであろうデザインの流れ、そのトレンド(売れ筋という意味ではない)を捉えて提案する先見性が必要になる。

そして、現代のニーズへ正直に答えているだけではデザイナーの能力は伸びないし、ブランドの売上を伸ばすことはできない。時には今の市場の感覚に抗って、次の新しさを提案するリスクを取らなければならない。現在の市場や顧客から否定されようとも、次の時代の新しさとして必要な感覚を世の中に提示し、刺激をもたらす。それを怠ると、ブランドは確実に売上が落ちる。顧客の欲しい服を作っているだけでは、売上は落ちるのだ。

「え!こんな服あったの!?これ欲しい!」

その服を見て自分の新しい欲求に顧客自ら気づく服を作る。それが、ブランドをビジネス的に成長させていく。

その意味では、今回のネオンサインは次の時代の感覚へ行く先端性を提示するものだったかというと、いささか弱い。しかし、その距離間がうまく感じられた。「今」を捉えて、ちょっと「先」を演出する。そのうまさだ。

展示会訪問後、あるセレクトショップへ寄り、海外の有名若手ブランドの服を見た。LVMH PRIZEで過去ファイナリストにもなって、ショーを毎シーズン開催しているブランドだ。僕はそのブランドの服を見ても、ネオンサインほどの品格とクオリティを感じなかった。ネオンサインの方が魅力的。それが僕の結論だった。

ネオンサインは、まだまだとても小さいブランドだ。しかし、そのデザインクオリティは世界に負けるものではないと思う。あえて言うならば、先端性の表現を今後どれだけ形にできるかということだろう。

細部が丁寧に作られ、それが全体に及んだ服は一瞬見ただけで心を揺らす魅力を漂わす。

「丁寧さは品格を生む」

そのことを、僕に教えてくれたネオンサインだった。

〈了〉

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