AFFECTUS No.68
2017年末にコム デ ギャルソン社を退社した「ガンリュウ」のデザイナー、丸龍文人が新たにシグネチャーブランド「フミト・ガンリュウ」を2019SSシーズンに立ち上げ、第94回ピッティ・イマージネ・ウオモでデビューショーを開催した。
先月発表された、突然のシグネチャーブランド開始のニュース。そこには驚きと共に期待感が滲んだ。その1stコレクションが、今日ようやくお披露目となった。
1stルックは、全身真っ白で足首まで達する長さのロングパーカー。フードは、現代のトレンドであるストリートを象徴するアイコン。そのアイコンで人間の象徴と言える「頭」を覆い、全身真っ白な姿で歩く姿には、それがロングパーカーというよりは神聖なローブを思わす印象を抱かせ、どこかの宗派の儀式へ赴く人々を連想させた。
その後に続くルックはストリート&カジュアルでありながら、エレガント&ミニマリズムな空気が発せられている。現在の最重要トレンドのストリートに、新たな軸が打ち込まれ、その視点が僕には他のストリートスタイルとは異なるテイストを感じさせ新鮮だった。ストリートへのカウンターからエレガンスが生まれ始めるのは自然な流れ。そのエレガンスをクラシックなスタイルではなく、ストリートの流れを引き継ぎながら、そこに融合させるアプローチは面白い。
先述したようにコレクション全体には厳粛なムードが漂い、それが宗教の儀式を思わす。このムード、何かに似ている。そして思い出す。ラフ・シモンズがシグネチャーブランドで発表した1999AWコレクションを。
このコレクションにも、宗教の儀式のような厳かな空気が漂っていた。しかし、ラフは「黒」と「テーラードスタイル」で表現していた。翻って、フミト・ガンリュウは「白」と「ストリートスタイル」。あの時のラフのコレクションが、現代の視点で再解釈されたようにも思え、「ファッションを読む」というファッションデザインの楽しみを僕に体験させてくれる。
また、先程から何度も述べている宗教の儀式を思わす厳粛さは、今コミュニティが重視され始めた社会トレンドのコンテクストをファッションデザインの中へ内包しているようにも感じられ、「服を着ることは時代を着ること」というファッションの核へ届く。
ギャルソン時代のストリートでありながら、ギャルソン時代には見られなかったエレガンス。この二つの融合は、丸龍文人の才能の奥行きを証明する。
衝撃的コレクションではない。しかし、今後を期待させるに十分なクオリティのコレクションだった。次回への期待が高まる。
〈了〉