オリジナルスタイルを獲得したガンリュウ

AFFECTUS No.116

いよいよ2019AWパリメンズコレクションが開幕。初日に登場したのがフミト・ガンリュウ。2016年末にコム デ ギャルソン社を退社した丸龍文人が、新たにスタートさせたシグネチャーブランドだ。デビューは前回の2019SSシーズン。そこで見せたのは、ギャルソン在籍時に示した自らのスタイルであるストリートマインドを発揮しながらも、どこか宗教儀式のような厳かな神聖さが表現され、新しいガンリュウ像を提示した。

そのデビューコレクションは、ギャルソン時よりもデザインがミニマルに変化して新鮮だった。しかし、2回目のコレクションとなる今回、ガンリュウはデビューコレクションを遥かに上回る、自らをアップデートし、時代のカウンターを表現する素晴らしいコレクションを披露した。そのことについて、これから詳述したい。

まず、触れなくてはいけないことがある。ギャルソン出身デザイナーの特徴について。これはギャルソン出身者に限らず、パリコレに参加するほとんどの日本ブランドに共通することでもあるのだが、デザインが多重多角的であるということだ。どういうことかと言うと、素材、ディテール、フォルム、それらのすべての服を構成する要素に全力投球かつ複雑であり、その複雑さをさらに重ねてレイヤー&レイヤーしているということだ。

具体的な例で言えば、今や日本を代表するブランドとなったサカイを見てもらいたい。まさにギャルソン出身デザイナー(日本ブランド)の特徴が凝縮されたデザインになる。

これはデザインの良い悪いという話ではなく、あくまでデザインの特徴であることをご了承いただければと思う。

このレイヤー&レイヤーは、その特徴ゆえ強烈なインパクトを与えるデザインではあるのだが、別の面で言えばコムデギャルソン的に見えてしまい、既視感を感じることもある。

丸龍文人はギャルソンの出身だ。しかし、今回彼は自らのそのルーツを乗り越えた。今回のコレクション、ギャルソン出身者とは思えないほど多重多角的要素をカットしている。シルエットとボリュームの表現にフォーカスしているのだ。ディテール面で時折複雑味があり、そこでギャルソンらしさを感じるが、しかし至って控えめ。

とりわけ、作り上げられたシルエットとボリュームのコンビネーションが素晴らしい。

ビッグシルエットは、現在の王様と言えるスタイル、ストリートの代名詞でもある。ガンリュウはそのビッグシルエットを吸収しながらも、そのアウトプットをストリートウェアとは対極のスタイルへフィニッシュさせた。「クラシック」である。その中心となったのは、ジャケット&パンツのセットアップスタイルだ。

カジュアルトレンド全盛の今、珍しくセットアップスタイルを押し出したコレクションは新鮮な空気を演出した。クラシックにビッグシルエットという味付けを加えて。モードコンテクストの主流に対して、その象徴となるビッグシルエットを吸収し、しかしクラシックでもって表現し時代へのカウンターを 打つ。王様に反旗を翻す反逆者のように。

ただ自分の好きな服をデザインするだけではモードにはならない。過去から現在に連なるモード史のコンテクストに自らの解釈を加え、その解釈を歴史の1ページに刻む。これがモードのデザインと言える。コレクションに参加しているデザイナーは、これを行なっている。それが意図してる場合もあるし、無意識の場合もあるだろう。けれど、結果的にコンテクストに沿ったデザインになっているのだ。

ギャルソンであることを乗り越え、モードコンテクストにハイスキルでカウンターを仕掛ける。その困難な道の果てに、ガンリュウは「オリジナルスタイル」を獲得した。そのスタイルはファンを魅了することだろう。

〈了〉

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