ピーター・ドゥのシルエットから想像する世界

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AFFECTUS No.120

今日述べることは、完全に完璧に僕の憶測であり、確かな事実は何一つない。あるデザイナーの作り出したシルエットから生まれたイメージを、言葉に記したくて書いたメモとも言える(メモと言うには長すぎるが)。そのことを前提に、一つの解釈として読んでもらえたらと思う。

そのデザイナーの名はピーター・ドゥ(Peter Do)だ。以前にAFFECTUSで一度ピックアップしたデザイナーだ。ピーター・ドゥは「LVMH グラジュエーツ プライズ(LVMH Graduates Prize)」で優勝した後、2014年に拠点をパリに移し、 フィービー ・ファイロ時代のセリーヌで経験を積んだ後にニューヨークへ渡り、デレク・ラムの下でさらなる経験を1年半積んでから2019SSシーズンに自身のブランド「ピーター・ドゥ」をスタートさせた。

推測するに、フィービーセリーヌに在籍していた期間は2014年から2016年、デレク・ラムには2016年から2017年というところか。

ピーター・ドゥのブランドサイトを見ると、2019SSよりも前、2018年にはカプセルコレクションを発表している。ドゥはInstagramアカウントを二つ持っていて、一つは自身の個人アカウント(ストーリーズにはよく料理がアップされる)。もう一つはブランドのアカウントになる。ブランドアカウントの最初の投稿は2018年1月23日だった。コレクションの制作期間等含めると、ドゥは2017年から活動自体はスタートしていたと考えるのが自然だろう。

ドゥのシルエットを見ると、フィービーセリーヌのシルエットを思い浮かべる。男性的で力強く、パワーを主張するマスキュリンで80年代なシルエットだ。しかし、そこには女性の身体をなぞるようなセンシュアルなラインが紛れ混んでいる。ドゥのデザインが描写するのは、たしかにフィービーセリーヌなシルエットである。けれど、そのシルエットを見ているとフィービーセリーヌのマスキュリン&80年代なシルエットは、ドゥが作り出したのではないかと思えてきた。

ドゥこそがフィービーセリーヌシルエットのオリジナルなのではないか。模倣ではないオリジナリティの根源のようなパワーを、ドゥのシルエットから僕は感じた。

ドゥがフィービーセリーヌに2014年から2016年の間に在籍していたとなると、関わったシーズンは2015SSから2017AWになるだろう。フィービー は、セリーヌのシルエットを2013Pre Fallからマスキュリン&80年代に変化させ始めた。そのシルエットの完成度が上がり、ある種の完成形を見せたと僕が思うのが2017SSシーズンだった。2017SSのセリーヌのシルエットを見ていると、まさにドゥが今シグネチャーブランドで発表するシルエットを思い起こす。

ドゥの他のデザインを見ても、その実力の高さが垣間見える。リアリティを保ちながら、モードな挑戦的ディテールを加味させ、マスキュリン&80年代なシルエットと複雑に大胆に融合させるバランスは秀逸の一言。

フィービーセリーヌのラストショーは2018SSになり、ドゥがセリーヌを去って間もない頃。ドゥはセリーヌでかなり重要な立ち位置だったのではないかと思える。

しかし、ここで述べていることは冒頭で触れたようにあくまで僕の憶測に過ぎない。たしかな情報源からの事実ではない。重ねて言おう。あくまで憶測だ。けれど、ドゥの服からそんな想像が生まれた。その想像から今僕が実感することは一つ。ドゥの才能と実力は本物だ。

〈了〉

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