その服にカルチャーを感じるか

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AFFECTUS No.385

今日は、最近様々なブランドやコレクションを見続けているうちに、感じ始めたことを書きたい。それは、現代で人気と注目を集めるブランドの特徴になる。これは、あくまで私が感じたことであり、この特徴があるからといって必ず人気ブランドになるわけではないだろうし、この特徴がなくとも人気ブランドになることもあるに違いない。だから、一つの考えとして聞いてもらえたらと思う。

ポイントは「現代」である。人気ブランドの特徴ではなく、「現代」の人気ブランドの特徴という点になる。ファッションは社会の変化に敏感で、時代が変われば人々が求めるファッションも変わっていく。今はSNSで瞬時に情報を入手し、ネットフリックス(Netflix)、スポティファイ(Spotify)といったエンターテイメントを楽しめるサービス、アマゾン(Amazon)のように自分が欲しいものをオンラインでいつでも好きな時に購入できるなど、現代の人々は自分の好きなことを様々な形で楽しむことができる。

もしかしたら、SNSやサービス、プロダクトを体験していくうちに「自分は、こんなものが好きだったんだ!」と、自分の中の「新しい好き」に気づかされることがあるかもしれない。そういう私も、動画配信サービスでアニメの面白さに気づき、自分の新しい好きを発見できたし、建築メディアによって住宅建築への興味が強いことも判明した。

私は料理を昨年まで作ったことはなかったのだが、今年になってから料理を作る必要性が生じ、作り始めるとこれが想像以上に楽しく、圧力鍋も購入した。私の場合、料理を作りたいというよりも、スパイスカレーを作りたいと言った方が正確なのだが、私が料理が興味を持つきっかけはYouTubeだった。

私が新しい自分の好きに気づけたのは、インターネットがあればこそ。誰にも、こんなふうに未知の楽しみをいくつも体験できるのが現代だと言える。では、様々なコンテンツを自由に楽しめるという時代を念頭に置いて考えた時、こういう時代に人々の心を捉えるファッションブランドとはなんだろうか。

その一つは「カルチャーが感じられるブランド」だと感じている。

レゲエやヒップホップ、アウトドア、ストリート、そう言った人々が夢中になっているカルチャーが反映されたブランドが、現代では心に響きやすいように思う。カルチャーを楽しむためのユニフォーム。そういう服が、現代のブランドに求められる要素かもしれない。「ヴェトモン(Vetements)」や「オフ-ホワイト(Off-White)」などのストリート発のブランドが人気となった背景には、様々なコンテンツを自由に楽しむことが当たり前になった現代の変化が影響しているように思えてしまう。

もちろん、例外もある。日本では「オーラリー(Aurelee)」がデビューして瞬く間に人気ブランドとなったが、オーラリーには上記のようなカルチャーは感じない。上質なオリジナル素材をシンプルに仕立てたデザインを、徹底的に探求して作り上げた服が強力な個性を生み、多くの人間の心を捉えて魅了した。

オーラリーのような例があるので、現代の人気ブランドになるため、コレクションにカルチャーが反映されているかどうかは絶対の条件ではない。ただ、もしデザイナーが夢中なカルチャーを持っているなら、コレクションに反映させる方が現代社会とイコールになったデザイの生まれる可能性が高い。

現代の人々は何かしらのカルチャーを楽しんでいる。自分の楽しんでいるカルチャーが感じられるブランドと出会えば、自然と興味を持つのではないか。そこで見たコレクションが、自分のカルチャーを楽しむにふさわしい服で、同時にそれまで自分がカルチャーを楽しむために着てきた服にはない新しさが、このブランドにはあると思えば、消費者はファンへと変わっていく。

アニメ、マンガ、スポーツ、映画、音楽、今最も夢中になっているもの、これまで夢中になってきたものは何か。自分の愛するカルチャーを最高に楽しめる服とは、いったいどんな服だろうか。

趣味も多様性になっている時代が今、一つの趣味に没頭するのではなく、興味を持ったことを複数同時に楽しんでいく。そんなライフスタイルが主流になっている現代で、私はカルチャーを感じさせるブランドこそが、強い存在感を放つのではないかと考える。

〈了〉

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