ルイ ヴィトンとキッドスーパーによるコラボコレクション発表が明らかに

AFFECTUS No.395

1月10日、興味深いニュースを発表される。2023AWメンズコレクションが発表されるパリ・ファッションウィーク(開催期間:1月17日〜22日)で、「ルイ ヴィトン(Louis Vuitton)」は、ブルックリンを拠点に活動する「キッドスーパー(Kidsuper)」のデザイナー、コルム・ディレイン(Colm Dillane)をゲストデザイナーとして招き、共に制作した2023SSメンズコレクションを発表することが明らかになった。コレクションの発表は1月19日となっている。

ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)が亡くなって以降、ルイ ヴィトンは新クリエイティブ・ディレクターを招聘することなく、デザインチーム体制で最新コレクションを発表してきた。ディレインは、アブロー亡き後、初めて迎え入れたデザイナーとなる。ゲストデザイナーと称している通り、ディレインはアブローの後任というわけではなく、あくまで限定的な参加であり、これが2023SSコレクションだけに限った話なのか、次シーズン以降も継続するかは現時点では不明だ。

以前、「ヴァージル・アブローを感じるルイ ヴィトン」(AFFECTUS No.171)でも書いている通り、ルイ ヴィトンのメンズコレクションは、ディレクター不在でデザインチーム体制で発表を続けているが、デザイン面だけを見るならば、デザインチームは十分な力量を証明している。むしろ、コレクションの完成度はアブローを上回っているとも言え、現在のデザインチームのリーダーを、新たなメンズディレクターに起用すればいいとさえ思うほどだ。

「グッチ(Gucci)」が、デザインチームのメンバーだったアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)を新ディレクターに抜擢し、新スターを生み出したように、ルイ ヴィトンも同様の選択をしてもいいのではないか。新世代の新しいスターが誕生すれば、ファッション界は盛り上がるのだから。

しかし、単純なデザインの実力だけで、世界に君臨する巨大ラグジュアリーブランドのディレクターは決められない。面白いニュースは、SNSを通じて瞬時に世界へ拡散する時代であり、その現象がビジネスに影響を及ぼす現代では、話題性にあふれたデザイナーの起用は重要だ。一方で、知名度も実力を兼ね備え、現在フリーのデザイナーがいるかとなると、フィービー・ファイロ(Phoebe Philo)ぐらいではないか。ただし、ファイロの専門はウィメンズであり、何より彼女はシグネチャーブランドのスタートがすでに発表されており、ファイロが新たにディレクターを引き受ける可能性は限りなく低いだろう。

そうなると、やはり現時点では世界的知名度は小さくとも、才能と将来性に溢れた期待と注目の若手デザイナーを、新ディレクターに起用する手法が最もインパクトを生むだろう。デザイン面においてのみ考えると、今回ゲストデザイナーとして招かれたキッドスーパーのディレインは面白い。

キッドスーパー最大の特徴といえば、カラフルな色彩感覚とポップなグラフィックだ。オークション形式でのショー発表となった2023SSコレクションは、キッドスーパーの魅力が余すところなく発揮されていた。パープル、イエロー、グリーン、ピンクなどのカラーが淡く優しいトーンで、ブルゾンやパンツを彩っている。使用されるカラーは確かに明るいが、決して鮮やかではなく、優しく淡い。

キッドスーパーのグラフィックといえば、絵画タッチのポートレイトだ。年齢・性別様々な人物のポートレイトが、少ない色数で塗られている。たとえば、唇・眉・髪の毛はブラックで、顔や胴体の肌はパープルで塗られているといったように。プリントされた人物たちの顔は最低限の特徴だけをリアルに描き、そのほかのディテールに関してはシンプルに仕上がっている。初めてキッドスーパーのポートレイトグラフィックを見た時は、アンリ・マティス(Henri Matisse)の絵画を思い出したが、今回改めて見てみると、ベルギーのアーティスト、リュック・タイマンス(Luc Tuymans)の絵画を思い浮かべた。

タイマンスの描く人物は、キッドスーパーのポートレイトグラフィックよりもリアリティが強いが、優しく淡いトーンのカラーと人間の顔のセットはタイマンスの絵画と近しいものを私は感じた。それらカラフルだけども淡い色彩とポートレイトグラフィックが、ストリートでカジュアルなスタイルと融合し、歩くアートのような雰囲気を醸し出し、オークション形式のショーという演出と見事な調和を成す。

キッドスーパーのデザインを見れば、アブローの系譜を受け継ぐ、現在のルイ ヴィトンと相性が良いように思える。カジュアルなキッドスーパーに対して、ルイ ヴィトンはテーラードのジャケットやコートが頻出し、ドレス成分の強いコレクションを展開するが、服のフォルムそのものはベーシックであり、キッドスーパーと同様に多様なグラフィックデザインがアイテムにプリントされている。

もし、昨年6月に発表されたルイ ヴィトンの2023SSメンズコレクションに登場されたグラフィックを、キッドスーパーのグラフィックと入れ替えても違和感は感じず、デザインチーム制作のコレクションよりポップな仕上がりになって、ルイ ヴィトンの新たなメンズスタイルとして期待ができる。

パリの現地時間で、1月19日(木)14:30にコルム・ディレインがデザインチームと共に制作したルイ ヴィトン2023AWメンズコレクションが発表される。あと数日でコレクションの全貌が明らかになるが、楽しみであると同時に、不在となっているルイ ヴィトンのメンズディレクターに誰が座るのか、非常に気になるところだ。いや、まずはコレクションそのものだけに集中しよう。未来のことは後回しにしていい。今は純粋にファッションデザインだけを楽しみたい。

〈了〉

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です