プラダのニューコンサバスタイル

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AFFECTUS No.414

私がファッションで驚きを感じるデザインは、2種類に分かれる。一つは「これまでに見たこともない服」というデザインだ。これはジャケットなのか、それともドレスなのか、私たちが普段着慣れているアイテムのどれにも属さない形をした、形容することが不可能な服。それが私にとっての「これまでに見たこともない服」になる。現在の「コム デ ギャルソン(Comme des Garçons)」がまさに該当する。

もう一つは、「これまでに見たことのある服で、これまでに見たことのない服」である。例えばトレンチコートをベースに新しくデザインされた服や、既存のスタイルを新しい解釈で見せたコレクションがそうなる。「トム ブラウン(Thom Browne)」は、アメリカントラッドという世界中に普及したスタイルを、驚異の発想で「アヴァンギャルドなアメリカントラッド」という、世界唯一のスタイルを作り上げている。

また、トム ブラウンとは異なるデザインに思われるだろうが、「ハイク(Hyke)」も私の中では同じカテゴリーに属する。ハイクはトレンチコートやダッフルコートなど、ファッション永遠の定番と化したアイテムを、ブランドの世界観を通して新たに再構築している。このコンセプトは、ハイクの前進「グリーン(Green)」で築き上げられたもので、私はグリーンの手法を知った時、新しい服を作るというよりも、理想の服に調整するという印象を覚え、このような方法でも新しい服が生まれるのだと非常に驚いた。

現在の私は、後者の新しさが好みになる。自分の見知っていたものが、まるで知らないもののように思える感覚がなんとも味わい深い。

前置きが長くなってしまったが、今回取り上げるのは「プラダ(Prada)」2023AWウィメンズコレクションで、ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)は、「これまでに見たことのある服で、これまでに見たことのない服」という、私が最も心が動かされるカテゴリーのデザインを発表した。

コレクションの軸になっていたのはコンサバウェア。クルーネックニット、フレアスカート、テーパードパンツ、パンツスーツなど、アイテムの名前だけ聞いても、新しさを感じることは難しいだろう。会社に出勤するためのキャリアスタイルとも言えるのが、今回のプラダが発表した基本スタイルである。

プラダの2023AWコレクションは、かつて1990年代にプラダ自身が発表していたスタイルでもある。華美な1980年代が終わり、1990年代に訪れたのはミニマリズム。「ヘルムート ラング(Helmut Lang)」や「ジル サンダー(Jil Sander)」が時代を牽引した1990年代、プラダも装飾性を削ぎ落とした、シンプルでクリーンなキャリアスタイルを発表する。

デザイン的にはジル サンダーと共通点が見られるが、コレクションから受けるイメージには違いがあった。ジル サンダーの服はシルエットがやや硬質で、モデルたちの姿は凛々しく、ボトムで例えるなパンツのイメージが強いスタイルである。一方、プラダはスカートのイメージが強いスタイルで、ジル サンダーよりもシルエットは柔らかく、フェミニンなテイストを帯びたミニマルデザインだった。

今回のプラダは、かつてのプラダを思わせるスタイルだが、過去をトレースしたままでは新しい服にはならないし、心が動くこともない。もちろん、プラダは新たな解釈が見せてくれた。しかも、最新コレクションのデザインは歪な方向へ向けられていた。

チャコールグレーのスーツを例にして述べてみよう。16番目に登場したこのルックは、パンツデザインがコンサバのイメージを呼び起こす。ウェストで履き、シルエットがテーパードが形作られ、丈は足首を見せる長さ。それらのディテールを眺めていると、私はサブリナパンツが思い浮かんできた。だが、パンツに合わせたジャケットはオーバーサイズで作られており、とても現代的なシルエットである。

ただし、私はコンサバなボトムとトレンドシルエットで作られたジャケットのギャップに惹かれたわけではない。モデルはジャケットを素肌に着ているのだが、大胆な着こなしに関心を抱いたわけでもない。興味をそそられたのは首元だった。スーツに欠かせないアイテムと言えばシャツで、該当のルックでもモデルの首元にはシャツの襟が確認できた。

しかし、先ほど述べた通りジャケットの下は素肌であり、シャツの襟のみがアクセサリーのように首元に飾られているのだ。しかもシャツの襟がかなり鋭角に尖り、かわいさもかっこよさも感じないデザインに仕上がっている。また別のルックでは、セミタイトスカートに合わせたジャケットが、肩をドロップさせ、袖幅も太く、やはりかわいさとかっこよさを感じるには難しいアンバランスな印象だった。

私はこの「かわいさもかっこよさも感じないこと」が新鮮だった。この新鮮さをダイナミックにデザインするのではなく、プラダのシグネチャースタイルであり、ファッション界普遍のスタイルであるコンサバを基盤にして、異端性をささやかにデザインしていたことが私には新しく感じられた。

インパクトのある服は人々を驚かせ、強烈な印象を記憶に刻む。その体験は、モード=インパクトという公式を成り立たせる。だが、心が大きく揺さぶられる体験をする服だけが、本当に新しいのだろうか。

感情の揺れ幅はゆっくりと静か。だけど、そんな服がモードの文脈に新しさを刻むデザインであることも、きっとあるはずだ。感情の揺れ幅に惑わされずに、服の価値を見ていく面白さ。それが今回のプラダにはあったのだ。

コンサバファッションをモードに見せたのは、コンパクトにデザインされた違和感。私はこのささやかな違和感をまた感じたい。その時、私の感情は大きな感動には包まれていないはずだ。そんな奇妙な体験が楽しい。

〈了〉

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