デュラン ランティンクが、現代ブランドで作り上げるアップサイクルウェア

AFFECTUS No.428

オランダを代表するブランドと言えば、「ヴィクター&ロルフ(Viktor&Rolf)」の名を真っ先にあげるが、久しぶりに面白い才能が同国から出現した。その名は「デュラン ランティンク(Duran Lantink)」。この名をご存知の方がいたら、かなりのモード通に違いない。私が知ったのはつい最近で、2023AWシーズン真っ只中の今年3月だった。

ランティンクの2023AWコレクションを初めて見た時、不思議な気分に襲われる。モデルたちが着用しているアイテムそのものに注目するならば、「ベーシックウェアをブランド流に解釈して発表するブランド」に位置するだろう。オリーブ、ネイビー、ブラック、グレーなどオーソドックスな色展開を見せ、アクセントにイエローやオレンジ、レオパード柄、落書き風のプリントが挟み込まれていた。

ベーシックアイテムを基盤にしたデザインや、シンプルな色使いを見ていると、私は2000年前後の「ヘルムート ラング(Helmut Lang))」のセカンドライン「ヘルムート ラング ジーンズ(Helmut Lang Jeans)」を思い出してきた。

しかし、ランティンクはヘルムート ラング ジーンズとは似ても似つかぬブランドで、ベーシックウェアに属するブランドではない。それは、2023AWコレクションのルックを一目見れば感じてもらえるはずだ。女性モデルが、ベージュのステンカラーコートを着用するルックがある。文章だけを読めば、いたってシンプルなスタイルに感じられるかもしれない。だが、実際にはアヴァンギャルドなデザインに分類すると述べた方が正しいルックだ。

異常なフォルムから目が離せない。女性モデルがステンカラーコートの上半身は異様なまでに隆起して、まるでマンガのキャラクターの造形を思わせた。強烈なパワーショルダーからウェストに向かって急激にシェイプし、そしてコートの裾に向かって再びシルエットは広がっていく。別のルックでもランティンクは異端性を表す。男性モデルは、シンプルなクルーネックの長袖セーターを着用しているが、セーターの上からワンショルダーの黒いロングドレスをレイヤードし、ウェスト付近は左右の両サイドが大胆に丸くくり抜かれ、男性モデルは左右の腰の肌を露わにしていた。

ランティンクは、ニットやコートなど、いわゆる「普通の服」を着丈やボリューム、アイテムの重心をスタンダードな形から外して誇張する。一見すればベーシックアイテムに感じられるが、ランティンクが発表するのはこれまでのベーシックでは見られたことのない、摩訶不思議なフォルムを作り出す。

例えるなら、「JW アンダーソン(JW Anderson)」のジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)が、ベーシックウェアをデザインするようなもの。アンダーソンなら、トレンチコートやジーンズという究極の王道カジュアルアイテムでも、不思議なバランスや造形の服へとデザインするだろう。

クリーンだがアヴァンギャルド。それがデュラン ランティンクというブランドだ。しかし、このブランドの異端性はまだ終わらない。

ランティンクは、ヴィンテージの服やデッドストックの生地を使用して、新しい服を作るアップサイクルウェアもブランドの大きな特徴なのだが、アップサイクルウェアの基盤に使用するヴィンテージウェアのチョイスが実に独特。

「バレンシアガ(Balenciaga)」、「プラダ(Prada)」、「ルイ ヴィトン(Louis Vuitton)」といったラグジュアリーブランドのコートやワンピースのデッドストックを解体し、先述したスタンダードのバランスを崩す手法で再構築して、新たなアイテムを作り上げている。しかも使用するブランドの服は、ラグジュアリーブランドに限らず、1990年代を代表するベルギーブランド「ウォルター ヴァン ベイレンドンク(Walter Van Beirendonck)、2016年デビューのベルリンブランド「GmbH(ゲーエムベーハー)」など、比較的直近で現在も活動中のブランドの服も、アップサイクルウェアの素材に使用している。

数十年と長い歳月が経過した服や生地を使用して、新しい服を作るブランドは珍しくないが、ランティンクのように現在も活動中のハイブランドの服を、アップサイクルウェアに使用する例は非常に珍しい。

そのためなのだろう、ランティンクのアップサイクルウェアには、非常にモダンな空気が満ちて、ノスタルジーはまったく感じられない。「クール」という言葉が似合う服だ。ブランドサイトにも独特のデザインを見せており、ファッションブランドのサイトと述べるには簡素なデザインで、華やかさや鮮やかさは皆無。白をベースに、ブルーをアクセントカラーにしている点が、サイトデザインで唯一目を引く点だろう。

ランティンクが初めてのランウェイショーを開催したのが、2021AWシーズンになり、先述のアップサイクルウェアも当時発表された服になる(「SSAW21」と明記して発表された)。

ブランドサイトを訪れると、アップサイクルウェアが現在もアップされており、その服をモデルが着て直立した姿で映し出されている。ルック写真をクリックすると、アイテムの詳細を知ることができ、アップサイクルウェアに使用したヴィンテージウェアのブランドも明記されていて、非常に面白い試みがなされている。

「バーバリー(Burberry)」のトレンチコート、「サカイ(Sacai)」のコットン製プリーツスカートを使用した、アップサイクルウェアも確認できた。服の造形をブランドサイトで改めて眺めていると、ニコラ・ジェスキエール(Nicolas Ghesquiere)時代の「バレンシアガ(Balenciaga)」も思い出させる造形にも感じられた。

現在も活躍中のブランドのヴィンテージウェア(中にはヴィンテージと言うには歴史が浅すぎる服もあるが)を使用し、不思議でクールなカッティングでモードに仕立て上げていく。デュラン ランティンク、実に興味深いブランドだ。

〈了〉

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