インテリアによる優しさと柔らかさのマニッシュスタイル

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AFFECTUS No.431

私は、テーラードジャケットを多用するマニッシュなウィメンズが好きだ。代表的なブランドの一つに、「ザ ロウ(The Row)」の名があげられる。シャープでクール、そんな服の雰囲気が女性のエレガンスを高めてくれる。そう思う一方で、マニッシュを軸にしたまま、ウィメンズ伝統のエレガンスである柔らかさや優しさが、溶け込んだ服を見たくなることもあるのだが、そんな私の希望を叶えるコレクションを発見した。

それが「インテリア(Interior)」が発表した2023Pre Fallコレクションだ。ソフトタッチなテーラードスタイルを作り上げたデザイナーの名前は、ジャック・マイナー(Jack Miner)とリリー・ミースマー(Lily Miesmer)。二人は幼なじみで、マイナーは「ボーディ(Bode)」のオペレーションディレクターを務め、ミースマーはスタートアップやD2Cブランドで働いた経験を持ち、有名スクールを卒業し、ハイブランドでキャリを積んで独立という、いわゆるファッションエリートとは異なる道を歩んできた。

私がインテリアを初めて知ったのは、2023Pre Fallコレクションだった。このコレクションはドレスのルック数が多く、私が魅力を感じたテーラードスタイルのルック数が少ない(そもそもの発表数が21ルックと少ないが)。だが、ルック数が少数にも関わらず、私はインテリアのジャケット&パンツが最も印象に残る。

ジャケットのシルエットはオーバーサイズ、パンツのシルエットはスリムに作られ、上下で生地の量感に強弱がある。ジャケットはボックスタイプに形作られ、メンズウェアのように直線的。曲線的なカットが感じられないため、インテリアのアイテムは、ウィメンズジャケットのシルエットを大きくした服というよりも、メンズジャケットをそのまま女性が着たようなオーバーサイズシルエットの服という印象だ。

この表現だと硬い作りの服がイメージされそうだが、ライトグレーやベージュといった優しく淡いトーンの色が使われ、素材はハリと柔らかさを備えた味わいを見せ、伝統的なメンズジャケットとは大きく異なる雰囲気を持つ。“The Nico Suit Jacket”と名付けられたジャケットはコットン100%、“The Owens Suit Jacket”という名のドロップショルダージャケットは、ビスコース47%、シルク45%、リネン8%という混率のテキスタイルを用いて制作されていた。

インテリアのジャケットで面白さを感じるのは、横と縦のバランス。肩はドロップし、身頃はボックシルエットで、横に幅広い印象を受けるが、ワイド気味なシルエットに対し、着丈は少々短く仕上げられ、それが軽さを演出する一因になっている。メンズテイストの硬く広いシルエットだが、色・素材・縦と横のバランスを駆使して、「ソフトタッチかつマニッシュなウィメンズ」という独自性の高い服を完成させているのが、インテリアだと言えよう。

2023Pre Fallコレクションは、スーパーミニレングスのスカート、裾をギャザーで膨らみを持たせたパターンで切り替えたティアードワンピース、レースの生地端を切りっ放しにした繊細なキャミソールなどのアイテムも登場するが、いずれも色は白で作られ、非常にピュアな存在感を放つ。ミニスカートとティアードワンピースでは、真っ白なハイソックスがスタイリングされているため、ガーリーな印象も漂う。ほっこりとしたイメージのデザインになりそうなところを、少女が大人の服を着ているようなスタイルに仕上げ、素朴な力強さが感じられるコレクションを完成させていた。

一方、今年2月に発表された2023AWコレクションでは、マニッシュなテイストが強化される。秋冬シーズンの服ということもあり、コートやジャケットの素材は厚みがあり、メンズアウター的雰囲気が濃厚。ドレスも発表されているが、ロング&フレアシルエットが多いため、2023Pre Fallコレクションよりも上品な仕上がりだ。ルックは夜の街中で撮影されているので、セクシー濃度もいっそう濃くなっていた。

2023AWコレクションはザ ロウに近いマニッシュテイストだと言え、それは私が惹かれたインテリアの魅力とは少々異なる。むしろ昨年に発表された2023SSコレクションの方が、柔らかさと優しさ、そしてわずかな甘さを忍び込ませたマニッシュが披露されており、私が惹かれたインテリアのオリジナリティが確認できた。

過去のコレクションを見ると、インテリアのスタイルはマニッシュを軸とはしているが、それがシャープに振れるか、ソフトに振れるか、シーズン毎に異なっている。私の勝手な願望を言わせてもらえば、インテリアはソフトなマニッシュを磨き上げて欲しい。そうすると、メンズテイストが特徴のウィメンズブランドの中でも、独自のポジションが築けて魅力が一段と輝くように思えるのだ。次回のインテイリアは、シャープとソフト、どちらに振れたマニッシュスタイルを見せてくれるだろうか。

〈了〉

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