「歪であることが美しさなんだ」と訴えるように、伝統のエレガンスを揺るがすダイナミックなファッションを発表してきた「ダブレット(Doublet)」。色と形と素材がぶつかり合い、ユーモアとドラマ性を生み出すストリートウェアには、笑顔になったり、戸惑いを覚えたり、幾つもの感情が渦巻く。
2023年6月25日、パリで発表された2024SSコレクションで、ダブレットの新しい魅力が明らかになった。一言でいうなら「ダブレットが作るクラシック」である。最初に述べておくが、今回のコレクションも、これまでのダブレットと同様にカジュアルな服とスタイルが基盤になっている。そのため、今回のコレクションを見て「クラシック」と称することに、違和感を覚える人がいたとしても不思議ではない。だが、私はクラシックという言葉が真っ先に浮かんできてしまった。いったいなぜなのだろう?
理由の一つに素材が挙げられる。
メンズやウィメンズのジャケットに使われるシックな素材が登場している。ダブレットと言えば、素材に大胆な加工を施す特徴がある。それは今回のコレクションでも健在だ。
だが、メンズスーツを思い浮かべるテキスタイルに特別な加工は見られず、素材をそのままストレートに活かして服を作っている。また、テーラードジャケットやシャネルジャケットといったアイテムが登場したことも、クラシカルな印象を強める要因になっている。
テーラードジャケット自体は、過去のコレクションで何度も登場しており、初めての発表というわけではない。ただ、今回はメンズスーツに使用されるようなオーソドックスな生地と色で作られているデザインが多く、クラシックの印象がより強くなった。特に、ウィメンズで登場したシャネルジャケットには驚いた。このような王道のコンサバウェアが、ダブレットで見られるとは。
これらのアイテムは登場回数は少ないが、シックな成分が濃いアイテムであるために、コレクション全体のイメージに影響を及ぼすほどのパワーがあった。
これまでのダブレットは、視覚的にインパクトのある加工がコレクションの特徴を形作っていた。だが、2024SSコレクションは一目で鮮烈な印象を覚えるダイナミックな加工を素材には加えず、ブラック、グレー、ブラウンなど落ち着いたベーシックカラーで作られた服が多く、素材をストレートに使っている手法がクラシックの印象を強めている。
ジーンズ、トラックスーツ、フーディといったアイテムも発表されているが、やはりこれまでよりもシンプルな印象を受けるし、クラシックな素材とストリートが混じり合ったスタイルが新鮮だ。
得意のストリートカジュアルが発表されつつも、チョークストライプやシャネルツィードなどの生地、テーラードジャケットやシャネルジャケットといったアイテムが、ダブレットの代名詞にもなっていた濃縮した装飾性を抑制し、スタイルの基盤はカジュアルながらも「ダブレット流クラシック」と呼べるコレクションを完成させていた。
とりわけ、素材を生のまま活かす手法は仕立て屋のようであり、熟練のテーラーがコレクションを制作している想像を掻き立てた。私は、そこにダブレットの新しさを感じたのだった。ストリートの形をした、クラシックの王道とは違う、クラシックの邪道。それが、私にとってのダブレット 2024SSコレクションである。
しかし、ここまでクラシックが新しい魅力となったコレクションと話してきたが、私が最も惹きつけられたルックは、Gジャンとトラックスーツを組み合わせた、この究極のカジュアルルックだ。
なんて渋いのだろう。軽装にもかかわらず、黒いスリーピーススーツを着用した男性に勝るとも劣らないエレガンスを感じる。ああ、そのイメージはクラシックだ。やはり、このコレクションはどこまでもクラシックなのだ。
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