展示会レポート
Neonsign 2024SS

2009AWシーズンよりスタートした林飛鳥による「ネオンサイン(Neonsign)」。以前から一度拝見したいと思っていたブランドだったが、今回初めて展示会へ伺う機会に恵まれ、昨日訪れてきた。今回は、ネオンサイン 2024SSコレクションの展示会レポートとなる。

表参道駅からほどなく歩いて到着した展示会場は、ネオンサインの事務所兼ショップを兼ねたスペース。白を基調とした内装、冷たく淡いブルーのフロア、オリジナルで作られた配管のようなラックが、近未来世界の実験場的雰囲気を醸し、独特の世界観が早速迫ってくる。2024SSコレクションのルックを撮影した場所も、この事務所兼ショップだった。

2024SSコレクションのテーマは、「世の中がNGとするもの」”ERROR” をテーマとし、日常的に起こる”mistake”(勘違い)、”human error”(意図しない結果)、あるいは機械の故障などに着目し作り上げたコレクションとなっている。

ルック写真の中でも際立つ存在感だったオーバーサイズのニットは、展示会場でもすぐさま目に飛び込む。

“ERROR”の文字が前面に連なる編み地とほつれたグランジな裾は、赤の色味と合わさり、特大のインパクトを放つ。赤いアルファベットがおどろおどろしく見える白いカットソーは、画像生成AIを使用したデザインであり、アルファベットは立体刺繍で作られている。血液が凝固したホラーテイストが匂う一方で、どこかコミカルでもあった。

衿幅は広く作られ、縫い代を表に出したり、裾、袖口、前端などに見られる生地のほつれが、ベージュのベーシックアイテムをイレギュラーに見せる。

“MACHINE CONTROL”の文字がプリントされたTシャツは、ネックがひとつまみされ、首元から不必要なタックを作り出す。

このスウェットは、本来なら裏面になる面を表地として使用し、胸の“ERROR”も反転させている。

そして、ルックを拝見した時から実際に見たいと思った1番のアイテムが、このブルゾン群だった。

これらのブルゾンは、着用すると燕尾服のように前端が外側に向かって開いていくパターンに作られている。ルック写真を見ることで、そのフォルムは実感してもらえるだろう。

外開きになる形状のため、最後までボタンをとめればフロントは歪みが生じる。今シーズンのネオンサインは、不都合な現象をデザインとして許容し、提案している。ブラックデニムのブルゾンは、ベーシックなディテールを踏襲しながらも、フロントとバックのヨーク部分から細かなギャザーを入れ、裾をフリンジ状に仕上げ、オーソドックスな服の表情にアレンジを施していた。

アイテム写真を撮影し忘れてしまったが、スタジアムジャンパーが着想源になったであろうブルゾンも、非常にクオリティの高い仕上がりだった。

展示会場で実際に拝見し、消費者としての物欲が最も刺激されたアイテムが、次のシャツ型アイテムである。写真は長袖しか撮影していないが、半袖バージョンも発表されている。非常に肉厚のある生地で作られ、シャツというよりもブルゾンと称した方がいいだろう。素材の質感は滑らかで心地よく、やや暗く沈んだトーンのホワイトが無機質でもあり、逆にそれが私の中で印象深く残る。

ここまでピックアップしたアイテムが示すように、今コレクションはテーマの“ERROR”をカットオフ、縫い代を表に出す、フロントボタンをとめると前端が歪む、裏面を表地として使うなど、通常の服作りならNGとされてきた現象をOKとするアプローチで、各アイテムがデザインされている。

それらの技法は、特別珍しいものではないと感じる人もきっといるだろう。ただ、ネオンサインが特異だった点は、誤解を恐れず言えば服をチープに見せる手法を、上質な質感の生地で制作していたことだ。

私が展示会場に到着し、ラックに掛かっていたアイテムを見るなり惹かれたのは、ディテールやシルエットではなく、生地の質感だった。非常に生地の表面が綺麗なのだ。通常なら、シンプルで上質なベーシックウェアを作る際に用いられるであろう生地の美しさだった。

だが、ネオンサインは「綺麗な生地をシンプルに仕立てる」という現代ファッションで多く見られるデザインに対する、アンチテーゼとも言える姿勢を示した。糸のほつれ、ポケットをラフに縫い付けるなど、綺麗な生地を綺麗には仕立てない。そして完成したスタイルも、ストリート感にあふれたオーバーサイズスタイルが主役。

スタンダードな手法に対して、イレギュラーな方向から取り組むことで生まれるエラー。それがネオンサインの2024SSコレクションの肝となっているように思えた。色や質感、ディテールやシルエットといった目に見える部分だけではなく、目には見えない服作りの背景にもテーマである“ERROR”が潜んでいたのだ。

ネオンサインの服を見ていると、試験管を手にする科学者の姿が浮かんできた。しかし、実際の服は私のイメージとはまったく異なるストリートウェア。私はこのギャップが楽しかった。やはり、ファッションはイメージを裏切られてこそ面白い。想像の向こう側に、きっと新しさが待っている。

〈了〉

 

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