アジアから発信される近未来世界のザンダー ゾウ

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AFFECTUS No.475

最近、近未来世界を感じさせるファッションブランドに惹かれる。私にとってその最たるブランドが、「ポスト アーカイブ ファクション(Post Archive Faction)」であり、サイバー空間のストリートウェアと呼びたいスタイルは未知の刺激を与えてくれる。そして2024SSシーズンは、フューチュリスティックなデザイン文脈で新たに惹かれるコレクションが発表されていた。それが “Pro A.I.Volution” と名付けられた「ザンダー ゾウ(Xander Zhou)」2024SSコレクションである。

同ブランドのデザイナーは、ブランド名と同じ名前のザンダー・ゾウ。2007年、中国出身のゾウは北京を拠点に自身の名を冠したブランドを開始する。未来派とも言えるゾウのメンズウェアは日本でも注目されている。今月11月4日、5日には大阪の古着店「11747391」で、11日、12日には東京の古着店「KIOSQUE CC」で、ザンダー ゾウの日本初ポップアップイベントが開催され、ゾウ本人も来店していた。

ザンダー ゾウの世界観を知りたい時は、最新2024SSコレクションをぜひとも見て欲しい。スーツ、トレンチコート、ジーンズ、アウトポケットを多く取り付けたワークブルゾン、ニットを肩掛けした姿と、アイテムもスタイリングもメンズウェアのオーソドックスファッションがいくつも登場し、そこにゾウはフューチャリスティックな味付けを素材とパターンワークに加えていく。

まずは素材に注目しよう。真っ先に視界へ飛び込んでくるのが、プロテクトアーマーを想像させる形状の、ボトムともアームレッグとも言えるアイテムだ。あえて近しい素材のアイテムをあげるなら、スキーブーツだろうか。メカニカルなスキーブーツがサイハイブーツ、もしくはパンツにまで伸長したものと言えよう。あるいはロボットの装甲にも似た外観であり、まるで人間がサイボーグへ擬態していく過程にも見えてきた。

ヒューマノイド的アイテムがスーツやニットとスタイリングされ、現代よりも文明が格段に発達した社会のオフィススタイルを思わせる。ルックの中には、携帯電話を当てて登場するモデルもおり、いつの時代、どの世界でもビジネスパーソンは多忙だという現実を突きつけられるようだ。

そしてパターンワークでも、ロボット的印象のニットアイテムとブルゾンが現れる。襟周りが、花が蕾を開くようにファスナーで開く形にデザインされ、ロボットの変身過程を想像させた。

コレクション終盤になると、PVC素材と思える透明素材で作られたコートやパンツ、果ては顔を覆うマスクまで登場し、未来世界は加速していく。さらには右半身はグレーのブルゾンとネイビーのパンツを履いた人間で、左半身はシルバーの金属素材で作られた服を着ているヒューマノイドという出立ちの異様なモデルが現れ、最後の2ルックは背中からヒューマノイド的腕が何本生えているモデルまで登場し、ショーはフィナーレを迎えた。

ここまで述べた印象では、未来世界をアヴァンギャルドに解釈したコレクションを想像されるかもしれないが(実際、そうなのだが)、ザンダー ゾウの注目すべき点は服そのもののシルエットが麗しく綺麗であることだ。

一旦、近未来装飾から意識を離し、服のシルエットに目を向けると、今すぐ着たいモダンな形に作られていることがわかる。2024SSコレクションの中で、装飾性の少ないアイテムの一つはジーンズだが、ほどよくボリュームを含んだワイドなシルエットが逞しく美しい。ザンダー ゾウは、サイバーなディテールや加工に目が奪われるが、アイテム1点1点の形が優れている。服としての魅力をしっかりと作り上げた上で、フューチャー視点を取り入れたブランドがザンダー ゾウと言えよう。

クリエイティビティとリアリティの融合が高いレベルで図られたコレクションは、これぞモードという醍醐味を味わせてくれた。これまでの歴史を振り返ると、アジアのモードというと日本から多く発信されてきたが、近年は中国や韓国から新たなアジアモードが発信されている。ザンダー ゾウは2007年からスタートしており、まさに時代を先取ったアジアブランドだ。今後も、ポスト アーカイブ ファクションやザンダー ゾウをはじめとした、アジア×近未来世界の文脈に注目していきたい。

〈了〉

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