ロクのメンズラインがランウェイに初登場

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AFFECTUS No.478

現在、最もモードファッションのキレを味わせてくれるブランドと言えるかもしれない。2016年にロク・ファン(Rok Hwang)が設立した「ロク(Rokh)」は、シャープなカッティングと挑戦的なフォルムで多くの女性を魅了し、そのクールなコレクションは男性をも惹きつける。2019AWシーズンのパリで初めてのショーを開催し、以降常にウィメンズウェアを発表してきたロクだが、今年9月に発表された最新2024SSコレクションでは大きな変化が現れた。それがメンズウェアの本格的発表だ。

この瞬間を待ち望んでいた男性ファンもきっと多いだろう。私も、ロクが本格的にメンズラインを始めることを待っていた一人だ。ランウェイショー初のメンズルックは、早くもセカンドルックで登場する。まず目に飛び込んできたのが、ボトムとソックスだ。ワイド幅の黒いパンツは膝下丈で、ややクリームがかった白いソックスは、ルーズソックスのようにたるむ。

上半身に視線を移すと、男性モデルはネックラインが深いクルーネックの白いインナーの上から、ピークドラペルの黒いテーラードジャケットを羽織っていた。ジャケットはダブルブレスト、着丈はヒップを完全に覆うロング型と渋い。トップスではクラシックな男性、ボトムではスポーティな少年、そして足元では10代の少女と、年代と性別の複数イメージがミックスされたスタイルがメンズラインのトップを飾った。

とりわけ注目したいのは、少年的なイメージだ。ロクのウィメンズラインはとびっきりにクールな女性像に特徴があり、女性モデルたちの佇まいに幼さを感じることはない。だが、ランウェイに初登場のメンズラインは、ウィメンズラインと比較して若さを感じた。

全体では8番目、メンズラインとしては2番目に登場したルックは、ストライプのシャツにオーバーサイズのトレンチコート、ややワイド幅のストレートパンツを合わせたスタイル。先述したメンズのファーストルックほどではないが、このルックでもパンツ丈は短めで、踝が見え隠れるするレングスだった。パンツの裾から覗く白いソックスは、またも少したるんでいる。シャツ、トレンチコート、パンツと、メンズのクラシックスタイルが現れたにも関わらず、全体の印象は若い男の子が背伸びして、大人のファッションを装っている姿がイメージされてきた。

今回発表されたロクのメンズラインは、ボトムとソックスが総じて若い。パンツの着丈は短めで、ソックスはたるませる。脚と足元で少年と少女の要素をミックスした世界観をキープしながら、上半身でクラシックあるいはカジュアルを織り交ぜていく。膝下丈のパンツにルーズソックスという、今回のコレクションお馴染みのボトムスタイルに、トラックジャケットを思わせるブルー&ホワイトのカジュアルアイテムを合わせたルックも登場した。

幾度も登場するテーラードジャケットとトレンチコートは基本的にオーバーサイズで、シャツも手を完璧に覆い隠するロングスリーブで仕上げた型が登場したりと、体型と服のサイズ感に差異が作り出されている。そして、少年&少女的世界観のボトムスタイルが融合することで、メンズラインはウィメンズラインよりもいっそう若さが感じられくる。ウィメンズラインの年齢像も20代の女性なので、イメージはもちろん若い。しかし、ウィメンズラインは、メンズラインのように大人・少年・少女といった年齢差の構成はされておらず、常に20代の女性像で一貫している。このように、ウィメンズラインと比較することで判明したのは、ロクのメンズライン最大の特徴は、年齢と性別のミックス感であるということだ。

また、挑戦的なフォルムを得意とするロクだが、メンズラインでは複雑なパターンテクニックは控えられ、コンサバな印象。もちろん、一般的なベーシックウェアに比べれば挑戦的だが、ロクというブランドの枠内で考えれば、メンズラインのパターンワークはシンプルに仕上げられている。

ロクは、ウィメンズラインでは服の造形で発揮していた挑戦的要素を、メンズラインでは服のイメージ部分で発揮する転換を図っていた。メンズウェアにはウィメンズウェアのような大胆なカッティングが馴染まない。それは、女性と男性の体型の違いが関係していると思われる。曲線的かつ立体的な体型である女性の身体は、ダイナミックなフォルムや複雑なフォルムが映えるのだが、同様のフォルムを直線的で平面的な男性の身体の上で展開すると、コスチュームのように感じられてしまう。

メンズウェアの特性に合う形で、ブランドの武器を応用したメンズウェア。ロクのメンズデザインには、そのような特徴がさらに感じられてきた。そして、性別と年齢が混合したスタイル自体も魅力的だった。今回のメンズラインでは、コートやジャケットなどのアウター類はオーバーサイズで、パンツもワイドシルエットが多く、ボリューミーだった。上下で服の量感が多く、大人と少年というイメージギャップが生まれ、ルーズソックスの少女的イメージも加わってくるのだから、非常に独創的と言うしかない。しかも、イメージが絡み合う重層的スタイルをアヴァンギャルド路線ではなく、クール&シャープなファッションの文脈でまとめたのだから、いっそう独創性が光るというものだ。

先ほど私は、ロクのメンズラインについてこう述べた。

「全体の印象は若い男の子が背伸びして、大人のファッションを装っているような姿」

だが、今ではこう変わっている。

「クールなモードウェアを、若い男の子たちが自由に着こなすカッコよさ」

期待のメンズウェアが始まった。

〈了〉

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