最新シーズンのスンネイは10点満点で何点?

スポンサーリンク

AFFECTUS No.479

ファッションの評価は主観が大きく占める。好みで判断される側面が多いため、誰かの大好きは誰かの大嫌いだったりする。そんなファッションを、採点で数値化して評価してもらおうというショーが開催された。大胆な試みを行ったブランドが「スンネイ(Sunnei)」だ。

近年のスンネイは、ショーやルックの演出で面白いアイデアを見せてくれる。演出の面白さという意味では、今や間違いなくミラノNo.1ブランドだろう。記憶に新しいところでは、2022AWコレクションが思い出さられる。

アスファルトの路上をランウェイに見立てた会場に、1台のタクシーが乗り付けると、ドアを開けて登場するのは最新アイテムを着用したモデル。車から降りたモデルは、一直線の道=ランウェイを走っていく。その後も同じように、タクシーが登場してはモデルたちが走る発表が続く。走る、走る、モデルたちは最新ルックス姿で颯爽と走る。実にスンネイらしい演出だった。

2023AWコレクションはショーを開催せず、ルック写真のみの発表となったが、スンネイのアイデアに衰えは見られない。このコレクションでは、モデルたちが胴上げされる姿を真上から捉えた写真がルックとして発表されていた。正直に言えば、モデルたちは空中に舞っているため、服の正確なシルエットは不明瞭だ。服を正確に見せる意味では不適切な発表方法だが、ブランドの挑戦的姿勢を見せる方法としては有効なアプローチである。

そして、9月に発表された最新2024SSコレクションでも、スンネイはユーモアを届けてくれた。それが冒頭で述べた採点評価である。モデルがランウェイに用意されたステージに上ると、観客席に座る人々は0から10までの番号、もしくは「+」が明記された小さなプラカードを掲げる。このショーは発表されたルックに、観客がその場で瞬時に採点するという仕組みだった。

今コレクションでも、シルエットと素材の妙で面白い違和感を植え付けるリアルカジュアルは健在だ。だが、ルックのデザインが気になりつつも、最新のスンネイスタイルがどう採点されるのかも気になっていく。そこで私は、各ルックの採点を調べ、ベスト3とワースト3を作成した。方法は以下になる。

1.  Vogue Runwayでルックをチェック。背景に写るプラカードの得点を合計する。
2. ただし、各ルックで背景に映るプラカード数は違っており、点数を確認できたプラカードのみ合計する。「+」表記のプラカードは除外。
3. 合計点数/プラカード数=平均点を出し、その平均点で順位づけする。

それでは各ルックに簡単なコメントをつけて、ルックのベスト3とワースト3を発表していこう。ちなみに、Vogue Runwayに振られていたLOOK Noも明記しているので、実際にルックを見たい方は、Vogue Runwayで確認して欲しい。ただし、現在Vogue Runwayのウェブサイトは有料化(現在、1年目は12ドル/年、2年目からは24.99ドル/年)しており、加入メンバー以外はルックや記事は閲覧できない。だが、Vogue Runwayのアプリなら無料でルックを閲覧できるので、無料で見たい方はアプリで確認するのがおすすめだ。

私はウェブサイトの方が見やすく、大量のコレクションをスピーディにチェックしたかったので有料メンバーに加入した。ルックの見やすさ、コレクションの調べやすさでは、やはりVogue Runwayが抜けている。

ではまずはベスト3から始めよう。

ベストルック第3位
LOOK 20 & LOOK 23:7.7点
二つのルックが同点3位となった。まずはLOOK20から述べていきたい。こちらはウィメンズルックとなり、全身をイエロー1色でまとめている。全体のシルエットは身体にフィットし、トップスは長袖のインナーの上に、ネックラインやアームホール、袖口を赤く縁取りしたタンクトップを2枚ほど重ね着したように見え、タイトなスカートは膝下丈で、スカートの下にはレギンスを穿いている。靴はイエローのプラットフォームシューズ。スポーティな印象を覚えるルックだ。

LOOK23もウィメンズで、こちらも全身を統一しており、このルックではデニム素材で統一を図っていた。トップスはハイネック&ノースリーブで、ネックラインから切り替えがいくつも入ったフレアシルエット。ボトムはエプロンのようなものが見え、その下にミニスカートを穿いているようにも見える。そして、ミニスカートらしきボトムのしたには、ワイドシルエットのデニムパンツがレイヤードされていた。

ベストルック第2位
LOOK 15:7.9点
こちらはメンズルックとなり、第3位のルックよりもシンプルだ。トップスは無地の白い長袖インナーでクルーネック。特別なデザインは見られず、オーソドックス。ただし、パンツは朱色を使って色でインパクトを出し、シルエットもかなりワイド。そして、膝と踝の中間あたりで、白い紐でドローストリングできる仕様となっていた。パンツの筒部分にドローストリングを使う際は裾に用いるのが一般的だが、このような中途半端な位置にドローストリングを仕掛けるとは、実にスンネイらしい。

ベストルック第1位
LOOK 14:8.8点
そしてベストルック第1位は唯一の8点台を記録し、9点にまで迫ったウィメンズルックである。こちらもデザイン自体は、シンプルなマキシ丈ノースリーブワンピースに見える。ただし、シルエットに面白さが伺える。素材はオレンジ×ホワイトのストライプ生地で、ストライプ幅は細めだ。ワンピースは裾に向かって広がるAラインとベーシックだが、このルックもレイヤードしているように見え、裾に注目すると3着のワンピースが重ね着されているかのように、ヘムラインがティアード状に大きく波打つ。

また、モデルから発信されるイメージもこのルックを印象付ける。モデルの表情は正気を失ったように白く見えて、ホラーテイストが漂う。ノスタルジックなワンピースとホラーのイメージが一つになった意外性が、このルックにインパクトを生んだ。

ワーストルック第3位
なし
ワースト2位で二つのルックが同点となっため、該当なしとした。

ワーストルック第2位
LOOK 9 & LOOK 24:6.1点
まずはLOOK 9から述べていきたい。こちらはメンズルックになる。トップスは淡いブルーで、柔らかな生地を使ったオーバーサイズシルエットの長袖シャツだ。ただし、生地は無地ではなく、前身頃の胸部分に抽象的な絵がプリントされていて、シュルレアリスム世界がブラウンとパープルで彩色されたような絵である。ボトムにはゆとりを持ったシルエットのシンプルジーンズが合わされている。正直、私はこのルックがそこまで悪いように思えず、シンプルなアイテム構成ながら、プリントとシルエットのコンビネーションで特性を出しており面白い。

LOOK 24もメンズルックだ。こちらはベストルック2位のLOOK13と同じスタイリングだが、LOOK13に比べると色使いがトップスは黒、パンツは優しい色味のイエローとやや地味で、ボトムのワイドパンツもドローストリングが、LOOK13は膝と踝の中間あたりという不思議な位置であったのに対し、LOOK 24は裾使いとベーシック。先にLOOK13が登場し、その後に似たスタイルでデザインが控えめなLOOK 24が登場したため、インパクトが薄れたのかもしれない。

ワーストルック第1位
LOOK 16:6.0点
そしてワースト第1位となったのは、全身を黒い服でまとめたウィメンズルックだ。これはたしかに地味に見えてもしょうがない。シャツはオーバーサイズシルエットで、ところどころが白くパイピングされている。ボトムはティアード状で横方向の切り替え線が何本も入ったデザイン。ルック写真では、パンツなのかスカートなのか判別がつかないが、パンツに思える。靴はハイヒールで、アッパー部分が紫と黒のストライプ模様でなかなか面白い。ただ、全体で見ると全身ブラックというスタイルで、シャツとパンツというシンプルな構成で、各アイテムも造形的にもおとなしいため、アイテム単体で見れば実際に街中で着た時に個性的に映るデザインだが、今回のコレクションではかなり地味なルックに写り、物足りなさを覚えた。

以上が、ベスト3とワースト3のルックになる。

通常のブランドなら、こんなふうに公に採点されることを避ける。だが、スンネイは違う。他のブランドがやらないからやる。だから面白いものが生まれる。コンサバな印象を抱くことも多いミラノで、スンネイは異端な存在だ。

ショーで驚きをもたらすなら、豪華絢爛なセットを作ったり、生演奏を行ったり、資金を使ったものが多い。だが、スンネイが用意したものといえばプラカード。スンネイはアイデアで違いと面白さが作れることを証明し、ショーで受けた低評価の採点さえも、自分たちの面白さに取り込む。だから、スンネイを見ることがやめられない。奇想天外のイタリアブランドには癖になる面白さがある。次のシーズンはいったいどんな仕掛けを見せてくれるだろうか。

〈了〉

スポンサーリンク