Stein 2024SS

先鋭的な新しさよりも、味わい深さと美しさを服に求めることがある。シルエット、素材、ディテール、仕様といった服を構成する要素の一つひとつを、デザイナーが自身の美意識で突き詰めて表現された服。そんな職人的趣を感じさせる服が恋しくなる瞬間が、やってくる。

デザイナー浅川喜一朗が2016年に設立した「シュタイン(Stein)」は、展示会を訪れるたびに美しくブラッシュアップされた感覚を覚える。黒を基調にした色使い、オーバーサイズの量感が麗しいシルエット、いつだって根底にあるクラシックの香り。浅川が標榜するファッションは変わらない。

しかし、そんな不変のシュタインスタイルに、微かな変化を覚えたのが今回の2024SSコレクションだ。ワークウェアとミリタリーウェアのテイストが、これまでよりも強く感じられたのだ。クラシックな趣に変化はない。ただ、わずかにカジュアルの趣が匂うようになった。

比翼仕立てのスタンドカラーブルゾンは「バラクータ(Barakuta)」のスイングトップに通じる香りを漂わせ、フロントがファスナー開きのブルゾンはまさにワークウェアの本流本道、合繊素材のフードブルゾンだってそうだ。

特にインパクトが迫ってきたアイテムがデニムウェアだ。とりわけ私が魅了された服はデニムジャケットだった。シュタイン得意のオーバーサイズシルエットで仕立てられ、デニムにはケミカルウォッシュ加工が施されている。色はブルーとブラックの2色。実際に着用して鏡の前に立ってチェックしたが、どちらも絶品。あえてどちらが好きかと言えば、私はブラックだった。

それはなぜだろうと、今書いていて疑問に思う。

私と同年代(1978年生まれ)の人々なら、ケミカルウォッシュデニムがネガティブに感じられた時代をきっと体験しているはずだ。ケミカルウォッシュのジーンズを穿いて街を歩いてたなら、「ダサい」と評価されていた時代を。

だが、シュタインのデニムは、私が知るケミカルウォッシュとは違う。なんとも愛おしく味わい深い素材の表情、スタイリッシュなシルエット、それらが私の心を捉える。そしてブラックに染まったケミカルウォッシュこそ至高だった。袖を通し、鏡に映るデニムジャケットに私は感嘆する。

「ああ、こんなにもこの素材は綺麗だったのか」

私が抱いていたケミカルウォッシュデニムの記憶を、完璧に塗り替えたのがシュタインのブラックデニムだった。だからこそ、私はブルーよりもブラックに惹かれたのだろう。たぶん、きっと、間違いなく。

こんなふうに思う。シュタインのデニムジャケットを着て、ケミカルウォッシュのデニムがダサいと言われていた時代に戻って、街中を歩いてみたい。私は当時の人々からどんな視線と気持ちを向けられるのだろう。

「うわーケミカルウォッシュ着ている。え、でも、あれはなんだ…」

そんな好奇な感情で見られるのだろうか。ああ、そんな視線を浴びてみたいものだ。

シュタイン2024SSコレクションは、私の中に奇妙な欲を生み出した。

〈了〉

 

 

 

Official Website:ssstein.com

Instagram:@ssstein_design

 

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