共鳴するジャンポール・ゴルチエとシモーン・ロシャ

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AFFECTUS No.524

2020年1月に引退を発表したジャンポール・ゴルチエ(Jean Paul Gaultier)。ただし、その発表が本当の意味での現役引退ではないことは、多くのモードファンがご存知だろう。現在のゴルチエは、ゲストデザイナーを招待してオートクチュールを製作する形式で、毎シーズン最新コレクションを発表している。

これまで招かれたデザイナーは、「サカイ(Sacai)」の阿部千登勢、「ディーゼル(Diesel)」および「Y/プロジェクト(Y/PROJECT)」のクリエイティブ・ディレクターを務めるグレン・マーティンス(Glenn Martens)、「バルマン(Balman)」のオリヴィエ・ルスタン(Olivier Rousteing)、ハイダー・アッカーマン(Haider Ackermann)、「ラバンヌ(Rabanne)」のジュリアン・ドッセーナ(Julien Dossena)の5人になる。

そして6人目のゲストデザイナーには、ロンドンからシモーン・ロシャ(Simone Rocha)が招かれ、2024年1月に2024SSオートクチュールコレクションがパリで発表された。

ゴルチエとロシャ、これは興味深い組み合わせだ。ゴルチエといえば肉体をエロティックに表現する術に長け、ロシャは妖精と悪魔が混在するようなフェアリー&ダークなコレクションを得意とする。両者がタッグを組んで製作したオートクチュールは、幻想的なエレガンスを誕生させた。

パニエを用いて腰回りを膨らませたシルエット、サテン製のコルセット、クロシェ編みやレース、螺旋状に捻ったリボンで装飾されたドレス、ゴルチエらしいコーンブラの造形でバストを強調するテーラードジャケットも登場し、ランウェイに登場したルックはいずれも豪華絢爛、荘厳華麗な美しさにあふれている。

色使いはピンクとベージュが多用され、ロシャの美意識が前面に現れており、垂れ下がるリボンや煌びやかなビーズによる装飾は、ロシャが得意とするフェミニンな甘さがこれでもかと漂い、一方バストやウェストといったボディラインを強調するアイテムはまさにゴルチエワールド。

ゴルチエとロシャは手法は異なるが、双方ともボディラインをセクシーに装う。コーンブラやコルセットがそうであるように、ゴルチエは硬い素材をメインに硬いシルエットを作り上げて、SMファッション的アプローチで挑発的に色気を視覚化する。それに対してロシャは、透け感のある柔らかい素材やレースを積極的に用いて、ベージュとピンクを主役にした色使いで、甘く誘惑的な色気を形にしていく。

一言でセクシーといっても、それを表現する手段は多岐にわたる。イヴ・サンローラン(Yves Saint Laurent)は1960年代に、男性が着用するスモーキングを女性が着ることでマスキュリンな色気を立ち上げ、 エディ・スリマン(Hedi Slimane)は「ディオール オム(Dior Homme)」がデビューした2001年から現在に至るまで、ロック&スキニーなスタイルで若者の色気を解き放ち、ニューヨークで発表するロンドンブランド「セルフ-ポートレート(Self- Portrait)」は、往年のハリウッドスターのプライベートファッションを彷彿させるスタイルで、コンサバな色気を伝える。

ゴルチエの武器がロシャの武器を高め、ロシャの武器がゴルチエの武器を高め、二人はオートクチュールの気品を舞台に、誘惑と挑発の色気を完成させた。1947年にニュールックを発表した稀代のクチュリエ、クリスチャン・ディオール(Christian Dior)が色気を増し、ディオールのエレガンスをさらに高めたかのようなコレクションは、ロマンティックでありダーク、クラシックでありエロティック。コラボレーションの真髄を披露したゴルチエとロシャのオートクチュールに賛美を。

〈了〉

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