展示会レポート Anei 2025SS

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年々、展示会シーズンのピークが早くなっている。以前なら春夏シーズンの展示会ピークは9月という印象だったが、今年は7月だと言っていい。バイヤーの予算がある時期に展示会を行うケースが増え、メンズコレクションの発表時期(6月・1月)に合わせての開催がスタンダードになりつつある。暑さが多少穏やかになった7月某日、「アーネイ(Anei)」2025SSコレクションの展示会を訪れた。

ブランドの概略について触れたい。「アーネイ」は、2018年に羽石裕によって設立された。羽石は文化服装学院卒業後、「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」や「Y-3(ワイスリー)」の企画・生産を6年間担当し、その後は「ビズビム(Visvim)」で生産管理を4年間経験し、自身のブランドをスタートする。

「アーネイ」の特徴はモードなカッティングと軽快なスタイルにある。一見するとベーシックなシャツやパンツでもあっても、通常のベーシックとは異なる構造のパターンを作り、服のフォルムを大胆に作り替えるというよりも、服のニュアンスを更新してデザイン性を軽やかに演出する。それが「アーネイ」のカッティングと言えるだろう。

服のパターンはデザイン性が表れる一方で、スタイルそのものは極めて優しく穏やか。スポーティなトラッドスタイルと呼ぶべきか、ルックには緊張感とは無縁の心地よさが漂う。

今回で展示会を訪れるのは3度目だが、2025SSコレクションは新鮮な変化を感じた。これまでよりもスポーティでカジュアルな印象が強くなったにも関わらず、上品さが過去のコレクションよりも格段に上がっているという、不思議な現象が起きていた。

スポーティな印象を強めた印象は、素材感にあるのだろう。一見すると合繊素材を多用しているように見えるが、ナイロン100%といった合繊素材はむしろ数が少ない。ナイロン50%&コットン50%などのように合繊素材と天然素材のミックスや、コットン100%、リネン100%、シルク45%&コットン55%といったように、天然素材100%の生地が多用されている。

こちらのMA-1型のブルゾンも遠目から見た時は合繊素材に思えたが、近くで見るとヘリンボーンに織られ、素材の組成はリネン100%だった。同型のブルゾンで素材違いも製作されていた。

こちらのブルゾンは合繊素材100%ではなく、ナイロン50%&コットン50%の混合素材である。個人的な趣向で言うと、この色味と素材感が好みだった。

2025SSコレクションは素材感のパワーでスポーティなイメージが強くなったが、服からは静かで上品なエレガンスが滲み出ていた。その要因は色使いにあると思われる。

ブラックやエクリュといった静謐なカラーに、今回はテラコッタとも呼べる、赤みのかかった明るいブラウンが渋さを添えてコレクション全体に落ち着きをもたらす。加えて、ニットやカットソーなどの軽量なアイテムに甘く爽やか色が使用されることで、シックな色の落ち着きがさらに際立ち、コレクションの上品さに拍車をかける。

また、素材で注目したいのは伝統技術と手作業も組み込んでいる点だ。

オープンカラーシャツは柿渋を用いて、滋賀県で手作業によって染めている。均一に染まることは難しいが、逆にムラが味を生む。製品に生まれた不均一な表情が、スポーティなデザインに新鮮な視点を加える。

そして、これらのアイテムが組み合わされたスタイルは重々しさなどどこ吹く風、モデルたちに軽妙な品格を纏わせる。

 

「アーネイ」はカジュアルなスタイルが魅力だったが、今回の2025SSコレクションはカジュアルを押し進め、テーラードジャケットなどクラシックなアイテムを減少させた。だが、冒頭で述べた通り、逆に上品なテイストが磨かれる現象を引き起こし、ブランドの新しい魅力を作り上げた。

先ほどは「スポーティなトラッドスタイル」と表現したが、改めてルックを見るとストリートも混じっている印象だ。グラフィックを武器にした装飾的なストリートとは別の世界線をいく、クリーン&スポーティなストリートである。次回のコレクションも楽しみな「アーネイ」2025SSコレクションだった。

Official Website:anei-official.com
Instagram:@anei_official

*「アーネイ」2025SSコレクションの全ルックはこちら

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