展示会レポート Doublet 2025SS

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久しぶりに展示会レポートをお送りしたい。今回は「ダブレット(Doublet)」2025SS展示会についてお伝えする。毎シーズン、驚きのアイデアとユーモアを提供してくれる「ダブレット」は最新シーズンも楽しませてくれた。まず会場を訪れると出迎えてくれたのは、こちらの女の子たちだった。

2025SSコレクションのテーマは「IDOL(アイドル)」。以下、今コレクションのリース文から一部引用する。

「あなたのアイドルは誰ですか?」
「あなたの推しは誰ですか?」
Doublet 2025SS Collectionより

推しを通して幸せになれる。推しがいるから幸せになる。このコレクションで、「ダブレット」はものづくりに携わる人々を自分たちのアイドルと称した。それは資源をリサイクルして循環させたり、何もないところから資源を生み出す人や企業のことを指す。

そのため、2025SSコレクションは素材の再活用や、素材のロスをなくす服作りを実現するため、タンパク質素材「Brewed Protein™(ブリュード・プロテイン™)」の開発を通じて、サステナブルな社会の実現を目指す「スパイバー(Spiber)」、寝具等の引き取りと再生素材化を行うサービス「サステブ(susteb)」、衣服の生産時における布地の廃棄量を削減する「アルゴリズミック クチュール(Algorithmic Couture)」を開発した「シンフラックス(Synflux)」など、資源の再生や再活用を行う様々な企業とコラボレーションを行なっている。

その背景を聞くと、シリアスな服を思い浮かべてしまいそうだが、ファッションにとって大切なのは楽しさ。「ダブレット」は社会課題の解決を、ユーモアにあふれたファッションとして具現化する。

こちらのフーディーには、スーパーで販売されている生鮮品のセールかと思わせるプリントが施されている。これは、フーディー生産時における布の廃棄量を、従来よりも29%削減を実現したことを伝えるプリントだ。

次にこちらのブルゾンを見ていただこう。

ワークウェア的であり、ライダースジャケット的でもあるブルゾンは、幅と厚みのあるシルエットで抜群の存在感。ショルダーに目を向けると、なにやらセーラーカラーのようなものが見えると思う。背後に回って確認してみよう。

セーラーカラーと思えた襟は、後ろ身頃の途中でだらしなくぶら下がっている。いったい、このディテールが意味するものは何なのか?

実はこのブルゾンの素材は、果物のりんごを再利用して開発されたもので、この襟はりんごの皮剥きを表したものだった。素材の根源をコンセプチュアルに表現して、見る者を楽しませる。「ダブレット」には、服を着る人間だけでなく、服を着た人の周囲にいる人々も楽しませる機知がある。

他にも古着のデニムを解体して、糸として再活用して新しい素材を作るなど、既存の服から新しい服を作り出す手法も行い、ファッションを通して社会課題の解決に取り組む。

次は今回のテーマである「IDOL」にフォーカスしたアイテムを紹介したい。

一見すると古着タッチのワークパンツだが、左右の側面になにやら付随しているのが見えるだろう。これは推し活に欠かせないペンライトだ。このペンライトは、パンツとセットになって発売されるとのこと。実際のペンライトは次のようなデザインになり、ブランドロゴが記されている。

スタンダードな形のフーディーとTシャツだが、胸元には手書きタッチのサインとチェキ(ポラロイドカメラで撮影されたカードサイズの写真)が確認できる。

通常時、このチェキは真っ暗だが、フラッシュを焚いてスマートフォンなどのカメラで撮影すると、チェキに女の子の顔が浮かび上がってくる(実際の写真を撮影し忘れて申し訳ない)。チェキに現れる女の子はAIが生成したアイドル画像になる。アイドルからサインとチェキをもらった嬉しさが、アイテムとして具現化されたようだ。

ここで、服のフォルムに触れたい。「ダブレット」というと、奇抜なアイデアや装飾性に目が奪われてしまうが、近年の「ダブレット」は服のフォルムがクールになってきている。そのフォルムは「ダブレット エレガンス」と称したい野生味と洗練が入りじまった独自の美しさを築く。先ほどのりんごを再活用した素材のブルゾンも、素材背景を抜きに服単体で見ても、非常に魅力的なフォルムだった。

退廃的なデニムジャケットもシンプルな形が魅力の、街中で今すぐ着たいという衝動を起こすデザインだった。とりわけ、レザー調の加工がされたデニムジャケットは素材のパワーもプラスされ、一着で主役となる存在感だ。

テーラードジャケットを試着したが、王道のクラシックではまず見かけることのない野暮ったいフォルムが、逆に魅力となっていた。ジャケットだからといって、かしこまって着たくない。ルームウェアのように怠惰に気軽に着たい。そんな気持ちに応えてくれるのが、2025SSコレクションのジャケットだ。ちなみに、同素材で作られたパンツもあるので、セットアップとして着用することもできる。

他にも学ランをモチーフにしたロングジャケットが発表され、そちらもクールな佇まいであった。以下は、パリのショーで発表されたロングジャケットのルックになる。

現在の「ダブレット」は服の形そのものの魅力が高まっている。装飾性をカットして、ミニマルなアプローチで製作されたとしても袖を通したくなる服。それが現在の「ダブレット」のフォルムデザインである。パリ王道の上質で洗練されたエレガンスとはまったく異なるエレガンスを、「ダブレット」のデザイナー井野将之は我々に届けてくれる。ファッションの美しさは数えきれない。多種多様なエレガンスの刺激は、まさにエンターテイメントだ。

Official Website:doublet-jp.com
Instagram:@__doublet__

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