韓国で確立された美しきシステム

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AFFECTUS No.540

近年の韓国は若手ブランドの躍進が目立つが、歴史ある韓国ブランドからも目が離せない。1990年設立の「システム(System)」は、ミニマルなアプローチで大人の男女を力強くシックに装う。2019年、「システム」は世界基準のファッションを目指し、グローバルコレクションと称したプロジェクトを発表。以降、クリエイティブ・ディレクターを務めるキム・ヒー・スー(Kim Hee Soo)指揮のもと、「システム」は洗練と気品を増していく。

6月にパリ・メンズ・ファッション・ウィークの公式スケジュールで発表された最新2025SSコレクションは、野生と都会の空気が絶妙に混じり合うモダンスタイルがランウェイを歩いていた。「システム」の根本にあるのはテーラリングでありクラシック。だが、正統派の着こなしとは違う。

ダブルブレステッドのジャケットは、着丈が長めに作られ、身頃の幅もゆったりと取られている。美しいオーバーサイズジャケットには、怠惰なムードと静謐なエレガンスが混在する。パンツも同様にルーズだが、だらしなさとは異なり、美しい気怠さとも呼ぶべき品格が滲む。

色使いはベーシックを中心で、スモーキーな色味に整えられている。グレー系、ブラウン系が燻んだトーンで多用され、曖昧なカラーパレットがクラシックの荘厳さを穏やかに崩す。ミニマルなデザインらしく、素材は無地が多いが、ボーダーやストライプに加えてフラワープリントも使われ、ポジティブな意味でミニマルに雑味が入っている。その結果、単なるクリーンとは言い表せない、一癖あるスタイルが仕上がっているのだ。

システムの人間像はほんのりとアウトローのイメージが匂い立つ。シンプルで装飾性を抑えたスーツを着ていても、なぜか写実的な花柄の開襟シャツを着ているようにセクシー。首元にはパールネックレス、黒いシャツは胸元を少し広めに見せ、ルーズシルエットのダブルスーツを着用する。「システム」に、正統派の着こなしは似合わない。

「システム」のコレクションを見ていると、1980年代のファッションが脳内に再現されてくる。それは、ネオンがギラギラと眩しく、マネーが飛び交った豪奢な時代の服の匂いだった。「システム」のコレクションは、パワーショルダーが主役だった1980年代の服を、ミニマルなアプローチで作った服と形容するのがふさわしい。

これまでのパリには高いデザイン性が求められたきた。だが、「オーラリー(Auralee)」のコレクションが評価を高めているように、実験性と大胆さが必須だったパリに変化が現れ始めている。モードの文脈が変わりつつあるのだ。クワイエット・ラグジュアリーのネクストスタイルが、姿を表し始めたと言ってもいい。高級なシンプルさとは別の文脈のシンプルさ。その解釈を競い合うゲームが始まっている。

新しいゲームに「システム」を一つの答えを提示した。一筋縄ではいかない男と女のためのシンプル&モダンウェアを、今こそ着たい。2025年の春夏を艶やかに更新するシステムを、韓国はすでに完成させている。

〈了〉

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