展示会レポート Digawel 2025SS

スポンサーリンク

7月上旬の茹だる暑さが復活してきた。歩いているだでけ体力が消耗される気候の中、展示会を訪れる日々が続く。展示会場最寄駅行きの電車に乗るつもりが、原稿のアイデアを考えていたら、まったく異なる路線の電車に乗ってしまった。すぐに目的地に向かう路線の電車に乗り換えようとも思ったが、このまま乗車することにする。乗り換え行為自体が、面倒くさく感じられてしまったのだ。

電車を乗り換えるぐらいなら、たとえ遠くても歩けばいい。それに展示会場から距離はあるが、歩けない距離ではない。そう思い、恵比寿駅から20分ほどの道のりを歩く。失敗だった。汗が流れ、会場に到着するころには完全に疲弊。しかし、地下に続く階段を降りていきドアを開けると、快適な室温に包まれる。「ディガウェル(Digawel)」2025SSコレクションが佇む空間は、熱気を冷ましてくれた。そして、ラックに掛かった服を見ていくうちに、さきほどまでの熱が引いていく。クールな質感がほんのりと漂うコレクション、それが最新シーズンの「ディガウェル」である。

2025SSシーズンのファッションウィークで発表されたコレクションをチェックしていて感じたのは、ドレススタイルの登場だった。カジュアルウェアがトレンドを引っ張る時代が続いていたが、ジャケットやネクタイというメンズウェアの古典的アイテムがランウェイを歩く。

しかし、だ。きっちり綺麗に着こなしたスーツが、目についたわけではない。服はクラシックであっても、着こなしはカジュアル。あるいはクラシックなアイテムであっても、サイズ感や素材感がカジュアル。そういったアプローチが、2025SSシーズンの傾向として現れていた。

「ディガウェル」の展示会を幾度か訪れるたび、品格を伴ったカジュアルな装いが印象に残っていた。ジーンズをはじめとしたカジュアルアイテムが仕立てられ、シルエットも量感のあるサイズ感で、ディテールのアクセントも細やか。シンプルな服と形容すればいいのだろうが、シンプルとは断言できない複雑さがノイズとして響く。だが、そのノイズは煩わしいものではない。心地よく優しく穏やかに響く。快適かつエレガント、日常的でエレガント。それが「ディガウェル」と言えよう。

これまで私が感じてきたブランドの特徴に、2025SSコレクションではクールな質感がコレクションの表層に加わっていた。クールな質感とは、素材感を指すわけではなく、イメージのことを指す。

ライトグレーの生地は優しく滑らかで、クールな質感と言えるが、それ以上にこの服の佇まいが私の言うクールな質感を指す。実際にジャケットを試着する。

体の曲線を拾わないボックス型のシルエットが、とても新鮮だった。ゴージの位置はやや低め、けれど着丈はやや短め。このバランスこそ、「ディガウェル」の心地よいノイズなのだ。オーソドックスなデザインなのに、クラシックではない。王道を歩みながら、王道から1本ずれた道を歩く。そんな印象が、他のアイテムにも感じられてくる。

外観は王道のデニムジャケット。しかし身幅はほんのりとワイドで、肩先もドロップショルダー。ウェスト部分にはファスナーが配置され、左右の両身頃下部に取り付けられたポケットはマチ付き。何よりも注目は明るいけれども、鮮やかさとは違うトーンのブルーとイエロー。王道を歩いているのだが、ずれてずれて、ずれる。けれど、ずれすぎない絶妙の塩梅。

チェック生地を使用したボトムは、下着のトランクスを彷彿させるが、このアイテムはれっきとした外着。ショートレングスのチェックパンツを穿き、ソックスはホーズタイプ。そしてシャツの襟元にネクタイを巻き、ボックスジャッケットに袖を通す。瀟洒なコメディアンを思わせる、品格と美しさが伴うメンズスタイルの完成だ。

クラシックな小物が「ディガウェル」のスタイルに、クールな質感を添える。気温の上昇が続く夏、気軽に服を着たいが、暑い季節にも凛々しい服が着たい時がある。けれど、ドレッシーなアイテムであっても、緊張感を纏う必要のない服。そんな欲求に、「ディガウェル」の2025SSコレクションが応える。

オフィスのエアコンが同僚には適温であっても、自分には少々冷える。そんな夏にはカシミヤ製のカーディガンを。上質で滑らかな素材感が、冷えた肌を優しく寄り添う。そして、今回のコレクションで最も惹かれたアイテムが、こちらのポロシャツだった。

近年、夏の超私的トレンドといえばポロシャツ。今年の夏も、1着新しいポロシャツ(色は黒)が仲間入りを果たして着用している。カジュアルとドレスを1着で両立する夏アイテムとして、ポロシャツは非常に優秀だと言える。「ディガウェル」のポロシャツは身幅が広く、袖丈もハーフスリーブと長め。気軽に着ることができて、エレガンスも纏える。できれば、襟元は第一ボタンを留めて着たい逸品だ。

見るからにワークウェアのど真ん中をいく素材感とディテール。しかしながら、襟先の丸いラウンドカラーが首元を優しくそっと引き締める。ここでも、クールな質感が現れていた。

今回の「ディガウェル」は、アイテム構成はむしろカジュアルが多い。それでもクールな質感を覚えたのが、ディテールなどにささやかな変化を加えるノイズが、これまでよりも一歩控えられていたことが理由に感じられた。直球のシンプルに着地しない、ギリギリのラインを攻めたシンプルウェアだと言えよう。

現代ファッションの文脈を捉えつつ、ブランドの本領を発揮する。巧みなデザインワークを見せてくれた「ディガウェル」2025SSコレクションである。

さて、今回の展示会レポートを書き終えた今夜はカレーを作ろう。いつもはスパイスを使ってカレーを作るが、今日はジャワカレーの中辛を使って作ることにした。暑い季節こそ、カレーが食べたくなる。やっぱり夏は暑いに限る。

Official Website:digawel.com
Instagram:@digawel_official

スポンサーリンク