ファッション界はジェンダーレスの浸透以降、ウィメンズとメンズの境界を超えた服の提案、ウィメンズとメンズ同時のショー開催など、ジェンダーに捉われない新時代のファッションの提案が続いて現在に至るが、昨今、ウィメンズウェアならではのエレガンス、メンズウェアならではのエレガンスを表現するデザインが再び現れ始めた。そのことはこれまで幾度か述べてきたが、女性の服が伝統的に持つ華やかさにフォーカスされた「ミュラーオブヨシオクボ(muller of yoshiokubo)」が、私に新鮮な喜びと驚きをもたらす。
2025SSコレクションの展示会場を訪れ、ラックに掛かっていた服から放たれる煌びやかな空気。会場にたどり着くまでの暑さで参っていた精神が、軽やかで爽やかなものになる。色彩と素材の調和がもたらすのは、まさにラグジュアリー。
カジュアルで日常的な服の白いTシャツでさえ豪華な姿に。シンプルなフォルムのシャツは、麗しい装飾品のような存在感。個人的に久しく見ていなかった華やかというファッションの特徴が、次から次へと目に飛び込む。
ワークなブルゾンやミリタリーなベストも「ミュラーオブヨシオクボ」のフィルターを通せば、甘くフェミニンな一着に変貌する。やっぱりファッションには、甘さが欠かせない。そのことを思い出させてくれるアイテムだ。
色彩も鮮やかだ。マルチな色使いを一着に凝縮させたシャツはアマゾン的であったり、アフリカ的だったり、迫力と大胆さで見る者を虜にする。シンプルなカットソーは、グラデーションの妙でスタイリングの脇役から主役へと躍り出る。カットソーの素材感は優しく滑らかで、触り心地をデザインすることもファッションでは重要なのだと改めて実感する。
特に印象に残ったアイテムはこちらのベスト。外観もインパクトあるが、このベストは鈴が取り付けられており、着用して歩くと鈴の音が鳴り響くというスペシャルなもの。ユーモアかつエレガントな服は、都心であってもリゾートの特別感を演出するかのようだ。
服の構造面とディテールは、立体的装飾性も形作っていた。クラフトワークが艶やかさを備えた野生味を作り出す。
今コレクションの色彩はPRの方がおっしゃっていたように、まさに化粧品を髣髴させた。シックでありフェミニン。女性が持つ多面的魅力を引き出す甘く優しい色の数々は、見ているだけで心を穏やかにしていく。
ラックに掛かっていた服を一点一点見ていて印象的だったのは、クオリティの高さ。外観の大胆さに目を奪われるが、縫製が丁寧かつ綺麗で、このクオリティの高さが服の品格をさらに高めていると実感した。
そして、最も驚くべきはデザイン濃度の高さ。色、ディテール、素材と様々な要素が凝縮され、一着に込められた情報量が多いにもかかわらず、美しいハーモニーを奏で、ファッションのエレガンスを築き上げている。このテクニックの高さは目を惹く。
特別な場で着るための服というものがある。その代表と言えるのがオートクチュールだろう。特別な場で特別な自分を演出する服の最高峰だ。
一方、「ミュラーオブヨシオクボ」は日常の場を特別に変えるパワーを持っていた。街中のストリートにいても、華やかで煌びやかな「ミュラーオブヨシオクボ」を着るあなたがいる場所は、どこでもいつでも特別な場所に変わる。場の空気を一変させるエレガンスが、このコレクションには備わっている。
リラックスしてシンプルに装うのもファッション。けれど今日は、開放的にファッションを楽しみたい。そんな日に「ミュラーオブヨシオクボ」なら応えてくれる。鮮やかで麗しいワンピースがあなたの期待を叶えるだろう。
Official Website:mullerofyoshiokubo.jp
Instagram:@mullerofyoshiokubo_official