Yoke 2024AW Collection

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毎シーズン、アーティストをテーマにコレクションを発表する「ヨーク(Yoke)」。2024AWコレクションのアーティストは、抽象表現主義を代表するフランス出身の画家ピエール・スーラージュ(Pierre Soulages)だ。

「黒の画家」と呼ばれたスーラージュの作品は、黒一色で厚く塗られたキャンバスに刷毛やナイフで溝を作り出す。線上に連なる模様は、荒々しい石の彫刻を彷彿させる迫力と緻密さが浮かび上がる。色彩が個性を生む絵画が多い中、黒の絵具一つで描かれた作品は異質な存在感である。スーラージュは、ブルー・ピーコック・レッド・イエローなど黒以外の色も使用しているが、どの色も暗く沈んだムード。「ヨーク」はスーラージュの黒が持つ立体感を、服に置き換えたようなダイナミズムを披露した。

白い雪原の中、登場したファーストルックは黒一色のブラックスタイル。いくつものアイテムをレイヤードし、厚みと大きさのシルエットが真っ白な雪の上で隆起している。

スーラージュの色彩を用いたルックが登場していくが、注目したいのはフォルムデザイン。近年の「ヨーク」は造形のパワーが増している。複雑怪奇な形を作っているわけではない。ボリュームを出す術に長けている印象だ。モデルの肉体を拡張した衣服とも言うべき立体感。「ヨーク」に袖を通せば、新しい肉体が手に入る。

クラシックなアイテムとスタイルを基調にし、コレクションが作られているため、「ヨーク」を着たモデルたちの姿には厳かな空気感が生まれていた。だが、規則に縛られた不自由さはない。クラシックを自由に着る。そんな人間像でありファッションであり、ストリートウェアにも通じる服と着こなし。

「ヨーク」の造形力が発揮されているのは、やはりコートだろう。ブラックやベージュ、ブラウンなどの落ち着いた色が、ワイドなボリュームでありながらスリムなイメージもはさ込みむコートのフォルムを引き立てる。

スーラージュは黒の絵具を刷毛やナイフを使って盛り上がらせ、凹凸ある絵画を完成させた。確かに黒という色は鮮やかではない。しかし、盛り上がった黒の絵具は多彩で見る者を惹きつける。スーラージュのダークなカラーが、近年磨かれてきた「ヨーク」の造形力をいっそう層際立たせる。

ファッションは鮮烈な色を使わずとも、鮮やかな服を作ることができる。「ヨーク」が服作りの固定概念を揺らす。

Official Website:yoketokyo.com
Instagram:@yoke_tokyo

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