展示会レポート Juha 2025SS

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今はカジュアルウェアが全盛の時代。シャツよりTシャツ、ジャケットよりフーディー。極端な表現かもしれないが、そんな価値観ではないだろうか。ルームウェアが外着のようにデザインされ、室外と室内の境界が曖昧化されたファッションが多く、服から緊張感を取り除くデザインも散見される。この動きはコロナ禍以降、顕著になった。

しかし、一つの価値観が浸透すれば別の価値観が芽生え始めるのがファッション。私たちは装いに、そろそろ凛々しさを取り入れてもいいのではないか。たとえ高温高湿度でうなされる夏であっても、サマースタイルの品格を1段階上げれば、その装いは涼しげな姿を演出する。そんなスタイルが「ユハ(Juha)」ならば実現できる。

だが、「ユハ」は決してクラシックに重点を置いてドレッシーなスタイルを作るわけではない。ルックを見れば、むしろカジュアルに軸があると言える。では、なぜ色褪せたデニムスタイルにエレガンスが生まれるのか。

展示会を訪れ、実際に服を手に取ってわかったのは、艶のある素材と色気のあるシルエットが大きな要因ではないかということ。レースや透け感、ダークな植物柄、ドレープ性が素材に艶を生み、「ユハ」のスタイルを妖艶に見せる。

黒いシアーシャツは形そのものは身頃がゆったりとし、袖幅も太く、前立てと衿幅も広く作られ、メンズシャツらしい頑強な外観だ。しかし、ポリエステル100%の素材はシャツの向こう側を透かすほどに薄く、けれど薄過ぎない絶妙の厚みをキープし、流麗なドレープ性と生地のさらっとした触感が肌を優しく撫でる。「ユハ」を着る体験が、佇まいに色気をもたらすのだ。

デニムウェアにも色気がある。ただし、素材はハードな加工がなされ、前述のような透け感やドレープ性といった特徴は持っていない。それでも色気が滲み出すのはなぜか。秘密はシルエットにある。

ワイドなジーンズは股上とわたりに余裕を持たせ、そのボリュームを裾まで直下させて、ロングスカートを彷彿させるエレガンスを匂わせる。頑強なGジャンも、シルエットに優雅な量感を入れて形作っている。

2025SSコレクションの「ユハ」は、強固な素材を使用した際はシルエットをドレッシーに仕上げることで、色気をデザインしていた。しかし、ただのオーバーサイズではない。フォルムの中にメリハリが作られているのだ。上記のGジャンで言えばドロップショルダーで身頃もワイドだが、正面から見てみると袖はスリムなイメージを植え付け、着丈も程よい短さで軽さを出している。「ユハ」のシルエットは、縦も横もすべてが大きいビッグシルエットとは、一線を画すパターンワークを実現させている。

また、Gジャンとジーンズは12オンスのデニムを使用しているため、思った以上に柔らかく優しいデニム生地だ。やはり「ユハ」は素材に艶を添えるのを忘れない。

今回のコレクション、実はかなりカジュアルなアイテムも展開されていた。しかし、鮮やかさから距離を置いた抑制されたトーンの色使いと、柔らかな質感の表情の素材がシックな趣を完成させ、日常をドレッシーに振る舞うことを助けてくれる。

「ユハ」は一貫して色気を伴うエレガンスを発表してきた。メンズウェアで提案し続けてきたツイードアイテムは、「ユハ」の姿勢を象徴するものだ。2025SSコレクションも1月に展開されるアイテムとしてツイードコートが発表された。だが、素材感は柔らかく優しく、ツイードの重厚感とは無縁。

2025SSシーズンに発表された数々のメンズコレクションを見ていると、テーラードジャケットを取り入れたエレガントなスタイルが現れていた。とは言っても、正統派なスーツではない。着こなしに隙を見せるリラックス&シックなメンズスタイルだった。エレガンスは、「ユハ」が一貫して発表してきたものだ。そして近年では、以前よりカジュアルの濃度を高めて、時代の傾向を捉えた上でブランドの個性を表現する、コンテクストデザインとも言うべき技巧を見せてきた。

ブランド設立から10周年を迎え、妖艶な美しさを仕立てるブランドは成熟の時が訪れている。いや、成熟と述べるのは早い。きっとまだまだ進化していくだろう。

Official Website:juha-tokyo.com
Instagram:@juhatokyo

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