北欧のカルトスタイルを更新するシュタム

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AFFECTUS No.548

コペンハーゲンを代表するブランドといえば、真っ先に「ガニー(Ganni)」の名が思い浮かぶ。2000年にコペンハーゲンで設立されたカシミア製品を取り扱うブランドは、2009年に転機を迎えた。ディッテ・レフストラップ( Ditte Reffstrup)がクリエイティブ・ディレクターに就任し、ディッテの夫であるニコライ・レフストラップ(Nicolaj Reffstrup)がCEOを務めることで「ガニー」は飛躍していく。

ガーリーかと思えばアダルト、ヴィンテージ調かと思えば瑞々しくフレッシュ。ギンガムチェックやレオパード柄を使ったワンピースやパンツは、女性たちをエネルギッシュ&フェミニンに装う。「#GanniGirls」というハッシュタグでInstagramを検索すれば、世界中のファンたちが身につけたガニースタイルを見ることができ、ブランドのInstagramのフォロワー数は150万人を超えるまでになった。

このカルトブランドのスタイルを更新する、文脈的デザインの価値を感じたコレクションを2025SSシーズンのコペンハーゲン・ファッションウィークで発見した。そのブランドの名は「シュタム(Stamm)」。設立は2022年とまだまだ新しいブランドだ。デザイナーのエリザベト・シュタム(Elisabet Stamm)は、北京を拠点にして2016年に設立された「エーエースペクトラム(A.A.Spectrm)」のデザイナーを務めていたが、2019年10月に退任する。その後「シュタム」をスタートし、現在に至る。

「シュタム」の2025SSコレクションは、「ガニー」に通じるフレッシュで瑞々しい感性が迸る。古着ライクな素材感はヴィンテージ調が魅力の「ガニー」と同様で、スポーツもトラッドもワークウエアも混ぜてストリートに仕上げたスタイルは、異なる世代のファッションを一つのカジュアルスタイルを作り上げる「ガニー」とも共通する。

このようにデザインの構造では共通点が見られる「シュタム」と「ガニー」だが、スタイルの方向性は異なる。先述したように「ガニー」はフェミニンが軸としてある。一方、「シュタム」には野生味が強く表現されている。「シュタム」がパワフルなストリートウェアを作り上げたポイントは、服のパターンワークにあった。

今回の「シュタム」のシルエットは一見すると、ワイドな形が目立つ。だが、よくよく見てみると、身頃も袖もすべてが大きいビッグシルエットとは異なり、身頃が比較的コンパクトに作られているのに対して(だが、決して細いわけではない)、袖が極端に広く太い袖幅で作られたブルゾンを発表していた。

スタイリングでもボリュームの強弱が明確なルックが多い。腹部を大胆に見せるほど着丈が短いTシャツは、身頃も袖もスリムフィット。このミニサイズトップスに合わせられたのは、ワイドシルエットのジーンズで、モデルはワイルドなボトムを腰穿きしてストリート感が満載だ。

色はピンクやベージュ、柄もチェックを使い、「ガニー」と同様のクリーンで若々しい素材を用いているが、それらの素材で作り上げる服のシルエットがパワフル。色褪せた素材感のオーバーサイズコートの下に、スイムウェアのブラトップを着用しているルックも確認でき、「シュタム」はスポーツの爽やかさとは無縁のルックも作り上げていた。

クリーン&ナチュラルという北欧デザインの枠を破壊した「ガニー」。そのカルトスタイルを、野生味あるストリートウェアへと更新した「シュタム」。ファッションの文脈的な面白さには底がない。

*8月18(日)の更新はお盆休みでお休みします。次回の更新は8月21日(水)になります。

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