PROJECTS:Nomàt “After Standard”

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「ノマット(Nomàt)」2024AWコレクションテーマのライティングを行う。

最初に始めたことはデザイナーとの打ち合わせ。今回のコレクションテーマに関する背景を、インタビュー形式で録音をしながら訊ねていく。その過程で、生地のスワッチやコレクションの着想源となった資料も拝見し、コレクションの核を探る。

2024AWコレクションテーマのきっかけとなったのは、デザイナーがある美術館でジャン=フランソワ・ミレー(Jean-François Millet)の絵画を鑑賞したことだった。だが、デザイナーが目を向けたのは色彩や風景といったミレーの絵画そのものではなかった。パリで評価を得られなかったはずのミレーが、パリで評価を得る絵画を完成させた背景が重要な着想源となっていた。

そのことを知った時、2024AW コレクションの核となる言葉 が「普遍への疑問」「スタンダード(世の中)になじめない自分」だと実感する。

世の中でスタンダードとされるものであっても、そのスタンダードに誰もがなじめるわけではない。田舎から都会へ上京した時、都会に住んでいても、学校、会社、人間関係 など新しい環境に移った時に、新しい環境のスタンダードに馴染めない人や体験はあるだろうし、誰もが一度は経験したことがあるのではないか。

「ノマット」2024AWコレクションは、大胆な素材加工や力強いフォルムとは裏腹に、そんな人々のための ユニフォーム、そんな人々の心情に寄り添う服だと思え、そこから文章の構成を検討していく。

タイトルを“After Standard”としたのは次の理由から。2024AWコレクションはスタンダードな素材やアイテムの特徴を、様々なテクニックで削ぎ落とした後に残ったものが特徴となっていた。それは新しいようであって、純粋な新しさとは違う何か。

ミレーが自身のルーツから滲み出したものが創造的な絵画を作ったように、服のスタン ダードが持つ本質の中の本質が、最後に滲み出したものが個性=エッジとなっている服、それこそが 2024AWコレクションの「ノマット」ではないか。

現在のスタンダードとは異なる次のスタンダード、けれどそれは本質が滲み出たものであり、純粋な新しさとは違う。そのため、“New”や“Next”という単語は使わず、「〜の後に残ったもの」を示唆する形でありながら、次の何かを感じさせるものとして“After”を選ぶ。

冒頭のタイトルと文章は、美術館のキャプションのように印字した文字を展示会場の壁に貼り付け、バイヤーなど展示会場を訪れた人たちに読んでいただいた。

LOOK:Nomàt 2024AW Collection