ショーレポート Telma 2025SS Collection

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ショー会場となった渋谷ヒカリエ ヒカリエAホールに到着し、扉を潜り抜けると、椅子が整然と並んだシンプルな空間が見えてきた。特設のステージを作るのではなく、会場のフロアがそのままランウェイになる。中島輝道による「テルマ(Telma)」はブランド初のショーを、装飾性を削ぎ落とした空間で見る者の意識を服に集中させていく。

中島は2010年にアントワープ王立芸術アカデミーを卒業後、「ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)」でウィメンズデザインの腕を磨く。その後は日本に帰国し、2014年に「イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)」に入社。ベルギーと日本での経験を経て、2022SSコレクションから自身のブランドをスタートさせた。そして「JFW NEXT BRAND AWARD 2025」でグランプリを受賞し、「テルマ」は今注目のブランドである。

「テルマ」のスタイルにはクラシックが香りが漂う。しかし、決して重々しさはない。むしろ2025SSコレクションは、スポーティな服に通じる軽やかさが感じ取れた。

シルエットはスレンダーでロングレングスの形が多く、コレクションにシックな趣を添える。シアーな素材のワンピースや柔らかな布地で作られたプリントワンピースは、モデルの歩行に合わせて裾が優雅に揺れ、夏の装いを涼しげにする。

ショーの最中、印象的だったのはバックスタイル。モデルが登場し、フォトグラファーたちの前で踵を返し、入口へ戻っていく。そのままバックステージに帰るかと思いきや、モデルは進行方向を変え、観客席に向かって歩みを進める。その瞬間、ピークドラペルのロングコートを着たモデルの背中に写るのは、オレンジの布地にグレーとブラックの無彩色が滲み、一輪の大きな花を想起させる柄だった。

ビビッドなオレンジに対して鮮やかな色を重ねるのではなく、シックなトーンの色を滲ませる。花柄のように見えるが、明確に花柄とは言えない抽象性を持った柄をプリントする。「テルマ」は王道に忠実なクラシックを完成させるのではなく、これまでのクラシックから外れた場所にある新しいクラシックを作り上げるのだった。

その姿勢はコレクションを通して徹底されており、「テルマ」のコートやドレスにシンプルと言える服はほぼない。いずれのアイテムも異なる色あるいは異なる素材を組み合わせたり、チェックシャツとストレートパンツがドッキングしたようなボトムが登場したりと、素材もパターンも挑戦的、伝統に測りながらも実験的だ。

華やかに大胆に装うよりも、落ち着いたムードで服を着たい。だけど、もっとモードなクラシックに袖を通したい。そんなファッションを望む人々の希望を叶えるのが「テルマ」だ。

Official Website:telma.jp
Instagram:@telma.jp

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