ショーレポート Children of the discordance 2025AW

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久しぶりに降り立った川崎市のJR南武線・武蔵中原駅とその周辺は、記憶の中にある風景よりもずっと綺麗になっていた。駅から15分ほど、すっかり暗くなった夜道を歩いていくと目的の場所に到着。今年も残りわずかとなった12月20日、志鎌英明による「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス( Children of the discordance、以下COTD)」が、2025AWコレクションのショーを川崎市のとどろきアリーナで開催した。今回が日本では最後となるショーだ。

会場に足を踏み入れて視界に入ってきたのは、フロアのグリーン。一面が緑の床は、とどろきアリーナ近くのスタジアムをホームとする川崎フロンターレを思い浮ばせ、どことなくサッカーのピッチに見えてきた。

音楽が聞こえ始め、ショーは開幕する。

COTDの代名詞となる刺繍、バンダナモチーフのアイテム、志鎌自身がデザインするグラフィックは最新コレクションでも健在。そして、ここ数シーズン、コレクションから滲み出していた上品さに磨きがかかっていた。フェード感のある長袖トップスとパンツ、カジュアルなスニーカーを身につけているというのに、モデルの佇まいから感じられるのはテーラードスーツを着用した際のエレガンス。目に見えている服と、頭の中で見える想像との間で心地よい齟齬が起こる。

以前よりもスマートなシルエットが増え、装飾性のボリュームが抑制されたアイテムも登場してきたことが、COTDのスタイルに落ち着いた品格という新しい魅力を生んだ。ストリートウェアを愛する若者が、スーツを着る年齢と環境になった。だけど、スーツ王道の着こなしはしない。あくまで自分のスタイルで貫く。そんな人物像が、グリーンに染まったフロアを歩くモデルたちにオーバラップしていく。

ショー終了後、囲み取材に現れた志鎌は憔悴しているように見えた。通常のスケジュールより1ヶ月も発表を早め、新しい工場との取り組みも行い、全身全霊でコレクションを完成させた。質問に小さな声で丁寧に答えていく志鎌の姿はカッコよかった。もの作りに自分のすべてを注ぎ込む人間の姿には、見ている者の心を動かす何かがある。次回の発表は2025年6月。場所はイタリア。会場のフロアを埋め尽くした一夜限りのピッチは、COTDと志鎌の新しい始まりを告げる。

Official Website:childrenofthediscordance.com
Instagram:@children_of_the_discordance

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