国際展示会場駅を降りると、駅周辺は大きく開けていた。時間は19時30分近くで、見上げると空は当たり前に夜空。遠くにとてつもなく巨大な建物が見え、数多くの窓から煌々と明かりが灯っている。調べてみると有名なマンションで、住宅デザインが好きな私は、迫力ある外観デザインに見惚れてしまった。

圧倒的存在感の建築を通り過ぎた先に本日の目的地、「ミーンズワイル(Meanswhile)」のショー会場があった。今回の会場となったのは、有明の複合型スポーツレジャー施設「有明アーバンスポーツパーク」。案内されて中へ入っていくと、コンクリートで作られた大きな窪みが見えてきた。ここはスケートボードパークで、モデルたちは階段で降りて、このグレーの床を歩いていく。窪みの縁に立ち、見下ろす形でショーを観戦することになった。

2月の屋外で寒いため、エマージェンシーシートが配布された。着用した人々がシルバーに輝き、一種のショー演出になっている。手の甲が冷えてきたころ、ショーは静かなBGMと共に開幕する。

拙い画像で申し訳ないが、このまま続けたいと思う。
「ミーンズワイル」のコンセプトは、「日常着である以上、服は衣装ではなく道具」。この一文が物語るとおり、コンクリートのフロアを歩くモデルたちが着用する服は、テクニカルな素材感とディテールが散りばめられたもの。だが、プロダクトの作りとは裏腹に、モデルたちから立ち上がっていたのは優しく柔らかなムードだった。

遠くから眺めたモデルは、灰色に染まった硬く殺風景な雪原を歩くようだが、グレーやホワイトを基調にブラウンやオフホワイトが加えられた色展開によって、心地よい雰囲気を纏っていた。
屋外で観戦していたためか、次々に登場する合繊素材で作られたウェアが暖かそうに見え、今すぐ着たくなってしまう。だが、「着たい」と思った理由は単に防寒性に惹かれたからではない。フードを取り付けたコートやブルゾン、ポケットが多用されてファスナーを用いたベストやパンツは、ミニマリズムに通じる静けさが美しい。ただ、服そのものはミニマルとは違う。ディテールに必要な要素を取り入れたアウトドアウェアとも言えよう。それでも静謐なエレンガスを感じるのは、やはりニュートラルトーンの色彩が理由だと思われる。
2月の夜、屋外、無機質なコンクリート。寒々しさを感じる要素は整っていた。だが、目の当たりにした「ミーンズワイル」の服には暖かみが優しく漂う。暖かみを生み出したもう一つの要因が、量感のあるシルエット。体を丸く包み込む柔らかさが端正に仕立てられ、そのシルエットが黒い服もソフトなスタイルに見せていく。

テクニカルなウェアはクール。そんなイメージを更新する「ミーンズワイル」の色彩と形。服づくりの原点が持つパワーを、改めて実感するコレクションだった。
Official Website:meanswhile.net
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