バーバリー、クラシック回帰が本格化

スポンサーリンク

AFFECTUS No.605

昨秋、歴史ある英国ブランド「バーバリー(Burberry)」の現状について書いた(2024年9月25日公開 No.559「苦境が伝えられる現在のバーバリーについて」)。2022年10月にチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したダニエル・リー(Daniel Lee)は、デビューコレクションでストリート感の強いスタイルを打ち出したが、2シーズン目からは英国ブランドらしいクラシックなスタイルへと移行している。

前回の2025年春夏コレクションは、リー就任後最もクラシカルなデザインだった。そして2月24日に発表された2025年秋冬コレクションでは、どのようなスタイルを見せたのか。今回は、その内容を考察していきたい。

もし「バーバリー」が新しい世代の顧客を狙うなら、今回のコレクションは非常に優れたものだろう。シルエットは適度なボリュームを取り入れたスリムラインを基調とし、その姿はリーが手がけていた「ボッテガ ヴェネタ(Bottega Veneta)」を彷彿とさせる。素材やアイテムはクラシカルながら、シャープなシルエットによって新鮮な印象を与え、ブランドの核であるクラシックを維持しながらも現代的なエッジを加えている。こうしたアプローチによって、「バーバリー」は新たな魅力を放っていた。

バーバリーチェックの使用は相変わらず控えめだったが、チェック柄のコートやトップスには起毛感のある素材が用いられ、トラディショナルな趣を漂わせていた。

今回のコレクションで特に目を引いたのは、アウターの充実ぶりだ。

ブランドの象徴であるトレンチコートは、ベルベット素材のバージョンが登場し、色気と重厚感を両立。両肩にエポーレットを配したチェスターコートや、ウエストを同素材のベルトで巻くローブ調コート、衿から見返しにかけてファーをあしらったダイナミックなミドル丈コートなど、豊富なバリエーションが揃っていた。

ウィメンズのドレスは、細身のシルエットが優雅な雰囲気を演出。一方で、ショート丈のアウターと脚にフィットするパンツ、ロングブーツを合わせた都会的なルックも発表された。通常なら「クールでモダン」と表現したくなるこのスタイルも、今回の「バーバリー」ではシックな印象に仕上げられていた。

「バーバリー」といえば、トレンチコートやバーバリーチェックといったアイコニックな要素が思い浮かぶ。しかし、リーはこれらをあえて前面に出さず、今回のコレクションでもその姿勢を貫いた。それでも、ブランドの根幹にあるクラシックはしっかりと通底しており、新たなブランドイメージを築こうとする意図が感じられる。

もちろん、ブランドの真の狙いは外部からは分からない。それでも、服から伝わるメッセージは確かにある。

一般的に、業績が振るわず、顧客の好みと異なるデザインを打ち出した場合、ブランドは通常、ニーズに応える方向へ回帰する。しかし、現在の「バーバリー」はそうではない。従来の顧客層に寄り添うのではなく、新たな世代の獲得を優先しているように見える。これは、前回と今回のコレクションを通じて感じた印象だった。

もし現在の「バーバリー」にインタビューをするなら、クリエイティブを統括するリーではなく、経営の指揮を執るCEOのジョシュア・シュルマン(Joshua Schulman)に話を聞く方が興味深いだろう。現在、リーは「バーバリー」を退任し、「ジル サンダー(Jil Sander)」のディレクターに就任するのではないかと噂されている。もしリーが去った後も、現在のコレクションの方向性が維持されるなら、シュルマンはかなり大胆な戦略を決断したことになる。

果たして、この変化が「バーバリー」にとって正解だったのかどうか。それは、これからの業績が示していくだろう。

〈了〉

スポンサーリンク