展示会レポート Maison Mihara Yasuhiro 2025AW

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必ずしも服に迫力は必要ない。シンプルな生地で仕立てたシンプルな服が、心を激しく揺さぶることもある。ただ、世の中には圧巻の迫力を持った服が存在する。圧迫感すら覚えるその力強さは、ファッションにおける流行という宿命をねじ伏せる。まさに、現在の「メゾン ミハラヤスヒロ(Maison Mihara Yasuhiro)」が放つパワーだ。

巨大なビッグフォルム、グランジという言葉では生ぬるい破壊的な加工、何層にも重なるドッキングのテクニック。「メゾン ミハラヤスヒロ」の服は、一着ごとの密度が異常なほど濃い。

ダメージ加工が施されたテキスタイルは、瞬時にして十数年の時間を経たかのような風合いを醸し出し、至るところに開いた穴がその存在を際立たせる。ハンガーに掛けられたコートは、まさにデストロイウェアと呼ぶにふさわしい。

イエローのニットは色褪せ、無数の穴が点在し、裾はほつれている。服の価値が「綺麗なコンディション」にあるとすれば、それを真っ向から否定するスタイルがここにある。

軽やかな着心地を追求するブランドが多い中で、「メゾン ミハラヤスヒロ」のドッキングウェアは真逆を行く。手に取った瞬間に伝わる重量感は、このブランドならではの魅力だ。シンプルな服を嘲笑うかのように、パターンも複雑怪奇。

Gジャンに似ていて、Gジャンではない。袖も襟もスタンダードな概念を逸脱し、MA-1も常識外の形へと変貌していた。前身頃は上下逆転し、裾が襟元に、襟元が裾へと反転。異形の前身頃が後ろ身頃とドッキングし、袖の位置すら変形されている。腕を通せば、見慣れたMA-1とはまったく異なるフォルムが浮かび上がる。

服の数だけ、スタイルがある。ある人が嫌う服が、別の誰かにとっては愛すべき一着となる。流行は特定のカテゴリーを押し上げる一方で、それ以外の服を影の存在へと追いやる。しかし、すべての人がトレンドを好むわけではない。スリムなシルエットや滑らかな素材が支持されようとも、その対極を愛する人は確実に存在する。

クリーンな服が主流の時代に、グランジやヴィンテージ感の強いスタイルを好む層へリーチするには、ブランドの存在感を極限まで高めるしかない。そのために必要なのは、“やりすぎ”と言われるほどの徹底した表現。身頃の下にシャツや他のアイテムが重ねられたテーラードジャケット、状態を後退させる退廃的加工のジーンズ、軽さを皮肉るような重量のコート。それらは圧倒的な迫力を放つ。

「メゾン ミハラヤスヒロ」を目の当たりにすると、クリエイションとは何かを考えさせられる。想像を超えるものを生み出すこと。そこに辿り着けるのは、ほんの一握りの人間だけ。そういう者を、クリエイターと呼ぶのだろう。

Official Website:miharayasuhiro.jp
Instagram:@miharayasuhiro_official

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