2月下旬、現在人気と注目を高めている「アンセルム(Ancellm)」の2025AW展示会へ。ファッションブランドといえば東京を拠点にすることが多いが、「アンセルム」は岡山を拠点とするブランドだ。岡山といえばデニムの産地として知られ、「アンセルム」も“視点を変えた経年変化の提案”をコンセプトに掲げ、デニムウェアを代表アイテムとしている。しかし、展示会で実際に服を見て感じたのは、デニムは「アンセルム」の一部に過ぎないということ。このブランドの魅力は、もっと奥深いところに詰まっていた。
まず印象的だったのは、フォルムの魅力だ。ハンガーに掛かる服からは力強さや野生味を感じるが、袖を通すと驚くほどのリラックス感がある。立体的なシルエットが迫ってくるような形をしていながら、着るとノーストレスとも言えるほど快適な着心地が包み込む。


レザージャケットやワークジャケットなど、外観は無骨で泥臭い。しかし、実際に着ると、服と体の間に生まれるボリュームが新しい造形を生み出し、自分の体そのものが異なるシルエットへと変化する。特に印象に残ったのは、ウールを使用したジャケットとシャツだ。



肩がドロップするオーバーサイズのシルエットは、まるでパッド入りのジャケットのように、肩から袖にかけて直角的で立体的なラインを描く。柔らかな素材感からは想像もつかない彫刻的な造形に、思わず見惚れた。
シャツのパターンにも独自性がある。襟の形や前下がり、身頃の切り替え線の位置などが標準的なシャツとは微妙に異なり、それが独特の雰囲気を生んでいた。「アンセルム」の服は極端にモードなわけではない。むしろベーシックな範疇に収まるフォルムデザインだ。しかし、パターンワークによって新しいバランスを生み出し、ベーシックでありながら、ベーシックとは一線を画すフォルムを作り上げている。


特に印象的だったのは、オリジナルで開発したチェック生地のシャツだ。ここまでフォルムについて語ってきたが、「アンセルム」の魅力は素材にもある。ヴィンテージライクな風合いと表現するのは簡単だが、それだけでは足りない。長い歳月を経た服だけが持つ、いい意味でのくたびれ感が美しい。特に暖色系のチェック生地を使ったシャツは、形と素材という服の重要な要素が高次元で融合していた。
また、「アンセルム」の服は袖口や裾がほつれ、糸が露わになっている。通常なら劣化と見なされる要素が、ここでは服の美しさを引き立てるディテールとなっていた。まるで鉛筆で描かれた黒い線の上に、水彩絵の具で淡い色を重ねたような、経年加工が優しい彩りを服に添えている。
この彩りが最も際立っていたのがデニムだった。


ヴィンテージ加工と言っても、破壊的なグランジ要素はほとんどなく、むしろ穏やかでエレガントな表情を持つ。まるでデニム生地をキャンバスに見立て、加工を色彩として用いたかのような、青いキャンバスに描かれた抽象画のような仕上がり。これは誇張ではなく、色褪せたジーンズの質感には気品が漂っていた。
展示会から1ヶ月近く経った今も、「アンセルム」の服が残したインパクトは色褪せない。



訪れていたバイヤーたちの表情には「熱」があった。その熱気も納得できる。それほどまでに、服そのものが持つ力を感じる展示会だった。「アンセルム」が今後どのように進化していくのか、ますます期待が高まる。
Official Website:ancellm.com
Instagram:@ancellm_official