先シーズンの2025SSコレクションでは、「ルミネtheよしもと」でショー(とコント)を発表し、見る者を驚かせた「ヨシオクボ(Yoshiokubo)」。ユーモアにあふれるそのショーは、まるで「ファッションは楽しくなくちゃ」というメッセージを伝えているかのようで、ファッションがエンターテイメントであることを改めて私たちに教えてくれた。
そして、2月某日、「ヨシオクボ」2025AWコレクションのショー開催案内が届く。開催場所を確認した瞬間、思わずマウスをスクロールする手が止まった。
「浅草花やしき?」
またしても久保嘉男デザイナーは、エンターテイメントを私たちに届けてくれるようだ。後日届いたインビテーションには、思わず微笑みがこぼれる。

3月10日、浅草駅に降り立つ。服飾の副資材が揃う浅草橋には何度も足を運んだことがあるが、浅草に来るのはこれが初めてだった。建物が低く、大きく広がる空に懐かしさと優しさを感じる。同じ東京でありながら、新宿や渋谷の高層ビル群とは異なる、どこか落ち着いた風景に心が穏やかになる。
初めて見た雷門に足が止まった。

歩きながら、外国人観光客が多いことに気づく。日本の下町文化が色濃く残る浅草は、私にとってもとても魅力的だった。神奈川県民で、生まれ育った川崎に愛着がある私には東京に住みたいという気持ちはあまりないのだが、初めて訪れたにもかかわらず、浅草には「住んでみたい」と心が引かれた。
駅から10分ほど歩き、ショー会場である浅草花やしきに到着。すでに多くの人々がショーを見るために並んでいた。

園内を見渡すと、浅草の街並みに似たような低い建物が目に入り、どこか昭和の香りが漂う。これが私を落ち着かせる理由なのだろうか。昭和生まれの私には、子どものころに見た風景と重なり、懐かしさを覚えた。
ショーはスタンディング形式で、道の両脇に人が並ぶ。そして、開幕の瞬間を迎える。
「KESSAKU(傑作)」と題された本コレクションは、服の造形が与えるインパクトで存在感を放つ。カーブする切替線、布地を踊らせるシャーリング、ワイドに膨らんだフォルムのどれもが過剰に表現され、ルックにパワーを注ぎ込む。ワークウェアやストリートウェアのエッセンスがベースに見える。スタンドカラーのブルゾンやトラックスーツをカーキやカモフラージュ、合成繊維素材で仕立てたアイテムはワイルドな造形で、昭和の花やしきの雰囲気と対比をなす。
モデルたちのスタイルからは「テックウェア」のワードを思い浮かべるが、クールで洗練されたデザインとは異なる。身頃に別布で作られた曲線のパターンがグラフィカルに組み込まれ、服に躍動感を与える。情報量の多い服といえるだろう。迷彩モチーフのブルゾンや、ジグザクの切り替えが際立つテーラードジャケットは、強い自己主張を放つ。目立ってこそファッションなのだ。
ラストルックでは、観客からざわつきが起きた。


肌触りが心地よく、毛玉もできない素材として愛されるヤクを模した巨大なバッグが登場。あまりの大きさに、脇に立つ人々が少し後ろに引いてしまうほど。モデルのクールな表情と巨大バッグとの対比でシリアスなユーモアが生まれ、会場のあちこちでクスッと笑いが漏れた。
現在、モードシーンにはデザイン性の強い服が増加している。しかし、服の造形に焦点を当てると、完璧200%アヴァンギャルドというフォルムは少ない。伝統的なアイテムをベースにし、その輪郭の痕跡を残したまま、デザイン性を表現するという手法が取られている。その文脈の中で、オリジナリティを発揮するためには、どんな表現をするかが重要だ。
「ヨシオクボ」は曲線的なパターンワークを大胆に組み合わせ、ダイナミックなワーク&ストリートの世界を作り上げた。そして、ショーの場所に選んだ浅草、日本文化が色濃く残るこの地で、服と日本文化の伝統に新たなノイズを加え、強烈なインパクトを残す。
次はいったいどんなコレクションを発表するのだろうか。やはりエンターテイメントなショーは、ファッションに欠かせない。
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Official Website:yoshiokubo.jp
Instagram:@yoshiokubo_official