2年ぶりにショーを開催した「コッキ(Khoki)」。その翌週、都内某所で行われた展示会を訪れた。駅から歩き、会場となった建物の前に到着する。ショーが五反田のオフィスビルで開催されたのと同様に、展示会の建物もファッションブランドの展示会が開催されているとは思えない外観だった。「コッキ」は、ファッション=華やかという固定観念を心地よく裏切る。
ドアを開けて展示会場に入ると、ショー会場と同じ空気が漂っていた。あの秘密めいた森のような雰囲気がここにも感じられる。ショーのように床に落ち葉が敷き詰められているわけではない。だが、不思議と森の入り口に足を踏み入れたような気分になっていた。会場は二つの部屋に分かれ、奥の部屋にはラックが並ぶ。
中央には3体のボディが配置され、ショーで登場したアイテムを纏っていた。ボディの脇には、クラフトテクニックが施されたバッグが椅子の上に置かれ、ノスタルジーを加速させる。


まず目に飛び込んできたのは、ハードな表情のシングルライダースジャケット。縫い代が露わになったまま、身頃に縫い付けられた袖が儚くも荒々しい。


実際にこのアウターを着て鏡の前に立つと、想像以上に本格的なライダースジャケットのシルエットで驚かされた。無骨なフォルムの美しさを損なうことなく、コレクションのピースとして見事に完成させている。洗練させることだけがファッションではない。粗野で逞しい服もまた、ファッション。そのことを改めて実感させる一着だった。

2025AWコレクションで最も魅了されたのは、スタンドカラーのブルゾン。素材とシルエットはアウトドアウェアそのもので、冬の街中でよく見かけるアイテムだ。しかし、テキスタイルの表面には動物と樹々が彩られていた。秋の山景色を映し出したような、カントリーな温もりが服全体を包み込む。
このブルゾンで注目したいのが、クロスステッチを用いた点だ。生地にグラフィックを表現する場合、プリントが王道だろう。しかし、「コッキ」のノスタルジックな世界観にはプリントよりも刺繍が似合う。しかも、フランス刺繍ではなくクロスステッチを選択したことで、母親が子どものために作った服と似た温かさが滲み出す。服そのものは現代のファッションプロダクトでありながら、クラフトな技法によって郷愁漂う服へと変身する。

現代のアウトドアブランドを想起させるこのブルゾンは、両袖をスーツに多用されるチョークストライプ生地で切り替えている。スーツとアウトドアという異なる領域の服が一つになった姿は、ファッションの境界を溶かす。クラシックかスポーツか、そんなカテゴリーを気にする時代ではない。好きな服を、好きな時に、好きなように着る。それこそがファッションの自由であり、醍醐味なのだ。

ショーでワンピースに見えたアイテムも発見した。ショーの際、モデルの足元をよく見るとパンツの形状が確認でき、ワンピースと思っていたものがジャンプスーツであることに気づいた。ジェンダーレス、クラフトマンシップ、ワークウェアの3つの要素が交錯し、このアイテムを文脈的な重層性を持ったジャンプスーツへと仕立てている。



「コッキ」のアイテムは、誰もが知るベーシックウェアをベースにしている。しかし、完成した服にはファンタジーが宿る。目を覚ましながら見る夢のように幻想的であり、同時に懐かしさが込み上げてくる。「コッキ」が作り出す世界観には「山」や「田舎」といった要素が根付いているのだが、今回の展示会で実際に服を見ていると、なぜか1980年代に熱中したファミコンが思い出されてきた。不思議だ。しかし、それもまた懐かしさという意味では共通している。「コッキ」のノスタルジーは、単なるカントリーだけではなく、もっと多層的なものかもしれない。


服に施された数々の手工芸的テクニックが記憶をノックして、楽しかった過去を呼び起こす。そんな心地よさが「コッキ」にはある。
Official Website:eye-khoki.com
Instagram:@khoki146