ショーレポート Telma 2025AW

スポンサーリンク

「このショーに出会えたことは、幸運なのではないか?」

時間を慈しむように優雅な姿で登場するモデルたちを眺めながら、ふとそんなことを思った。中島輝道の「テルマ(Telma)」は、東京の昼下がりにいることを忘れさせる、しっとりとしたエレガンスを披露した。

会場は東京・TODA BUILDING内の小さなホール。観客席は想像以上に少なく、シンプルな構成。ホールの両端に座席が設けられ、照明が落とされた暗闇の中でショーの始まりを待つ。そして、明かりが灯った瞬間、意外な感情に襲われた。

「テルマ」は、鮮やかな色彩と大胆な柄が象徴的なブランドだと思っていた。しかし、2025AWコレクションはそのイメージを覆す。無地の黒を主役にした艶やかなルックが次々と登場し、気づけば重厚で静謐な美しさに見惚れていた。

クラシックとはこのことを言うのだろうか。黒い服の美しさを、ここまで強く感じたショーは初めてかもしれない。ショートレングスのルックが登場しても、迫ってくるのは重厚なエレガンス。パンツルックになれば、シリアスな美しさはいっそう美しく映える。

このままブラックウェアで統一されたショーが続くのかと思いきや、一転。「テルマ」の持ち味である華やかで豊かな装飾性が現れた。シックなシルエットと対比を成すことで、デコラティブな素材の個性が際立つ。

昼過ぎであることを忘れさせる、暗くも華やかなスタイル。ショー終了後の囲み取材で、中島はこう語った。

「今回は夜にまつわるストーリーを組みました。都会の夜はショーウィンドウが煌々としているのに、表参道は真夜中になると人がいなくて、とてもクリーピー(creepy:不気味な、ぞわっとする)。だけど、美しくてワクワクするようで、どこか冒険的。それは日本独特の風景でもあると感じました」

その言葉を聞き、改めてショーを思い出すと、確かに一種の不気味さがあった。華やかで優雅な服を纏ったモデルたち。しかし、そこには伝統的なクラシックとは異なるバランスの傾きがあった。ジャケットが好きな女性は、肩幅が広く着丈の長いデザインを選ぶことで、アイテムへの愛を具体化する。煌びやかさを好む女性は、黒いドレスの裾にゴールドが眩しい星型の装飾を飾る。

本当は好きだけれど、いつもは主張するのは恥ずかしくて抑えている。けれど今夜なら、限られた人々——しかも、自分と同じ感性を持つ者たちだけが集まる場なら——愛するものを素直に披露できる。そんな個人的な秘密めいた趣向が露わになる、一夜限りの集い。

今日のコレクションには、そんなストーリーを想像させる力があった。

このテキストを書き始めた時、コレクションに対して「モダンなクラシック」という言葉が浮かんだ。現代のファッションでは調和の取れたエレガンスだけではなく、異なる要素が混じり合い、雑然としたものを美しさとするスタイルが現れ始めている。「テルマ」は、クリーピーな感性をシックな装いの上で表現するオリジナリティを示した。「モダン」とは単なる洗練ではない。現代の兆候を捉えるからこそ、「モダン」と称することできる。

今日、このショーを見られたことを幸運と感じたのは、「モダン」という概念を再考する機会を得たからかもしれない。しかし、それは一因に過ぎない。シンプルに美しかった。それが最大の理由。そして、それだけで十分だった。

Runway Finale Video ← click or tap

Official Website:telma.jp
Instagram:@telma.jp

スポンサーリンク