本日は、3月21日にショー観戦した「テルマ(Telma)」2025AWコレクションの展示会を訪れた。先日のショーも素晴らしかったが、実際に服を間近で見て、中島輝道デザイナーから話を伺うことで、クオリティの高さを改めて実感することになった。素材、シルエット、ディテールのすべてが作り込まれており、ここまで多層的に一体化した服には、なかなか出会えない。
ラックにはショーに登場したルック順にアイテムが並び、まず目を引いたのは、ショー冒頭で重厚なエレガンスを感じさせた黒い服の一群。特に印象的だったのは、ファーストルックで登場したテーラードジャケットだ。ショーではクラシックな印象だったが、実物を手に取ると、その先鋭的なデザインに驚かされる。

シルクウール製の黒い生地は樹脂加工を施し、その生地で作ったジャケットを平面に置いた状態でプレスをかけることで、プリーツのような折り目を生み出す。この折り目は樹脂加工によって半永久的に保持されるとのこと。


ジャケットは完成後にプレスを施したのではなく、袖を外した状態でフラットに置いてプレス加工し、その後に袖を取り付けるという手間のかかる工程を経ていた。その結果、意外性のある箇所にプリーツの折り目が生まれて独特の表情を生み、唯一無二の存在感を放つ。同様のプレス手法でプリントを加えたアイテムもあり、デザインの重層性がさらに増していた。

中でも特徴的だったのは、ところどころに生成色が浮かぶ黒いテーラードジャケット。これは、ジャケットをフラットに置いた状態でプリントを施したため、染料が浸透しなかった部分が生成色として残ったものだ。プリーツの折り目とプリントの要素が交錯し、より奥行きのあるデザインに仕上がっていた。
最も意外性を感じたのは、白いレースのロングドレス。天幅が広めのネックラインとスリムなシルエットが優雅で、繊細なレースが美しい。

しかし、柄に目を凝らすと、その印象が一変する。植物モチーフに見えた柄は、実は虎だった。優美な装いの中に潜む野生が、このドレスにさらなる奥行きを与える。

また、ショーで印象的だった星のドレスは、ジュエリーのように仕立てられていた。生地に煌めく星のモチーフは立体的に表現され、ゴージャスな仕上がりとなっている。

一見ムートンレザーのように見えるブルゾンも実は裏毛素材で作られており、特殊な加工を施すことでムートン風の風合いを再現。見た目の重厚感とは裏腹に、ジャージのような軽やかな着心地を実現している。



「テルマ」の服は、どのアイテムにも表情がある。たとえばカジュアルなジーンズも、今回のテーマである「夜」を表現するが如く、デニム生地の表面は加工が施されて夜空に光る星々のようだ。加えて、ウェストからタックを加えることでシックに作り込む。通常ならベーシックに留まるアイテムも、「テルマ」のフィルターを通すことでクチュールライクな美しさへと昇華される。
先日のショーを見たときに感じたエレガンスは、日本のブランドとは思えないほどの気品に満ちていた。中島デザイナーは、ベルギーのアントワープ王立芸術アカデミーで学び、卒業後は「ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)」に入社し、ウィメンズデザインのキャリアを積んだ。その洗練された感覚は、彼の経歴からも自然と滲み出ている。
しかし、「テルマ」の魅力はそれだけに留まらない。中島デザイナーは日本に帰国後、「イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)」に入社する。そして、日本各地の産地を巡りながら服作りを行ってきた。
その経験が「テルマ」に息づいている。今回のコレクションも、滋賀県の染工場と開発した鉄のように見える箔プリントと石を彷彿させるドットプリント、桐生の職人とテクノロジーによる豪華な星の刺繍、尾州産のクラシックでありながら、夜の星々のように煌めくヘリンボーン生地と、全国の産地で手掛けたスペシャルな素材が並び、服のパターンワークの精巧さも際立っている。
素材とパターンが高度に融合した「テルマ」の服は、一点一点の密度が濃い。その完成度の高さが、今後のさらなる飛躍を予感させるウィメンズブランドだ。
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Official Website:telma.jp
Instagram:@telma.jp