AFFECTUS No.672
ファッションが読まれる #7
「バスケットは…お好きですか?」
これは某バスケ漫画に出てくる有名なセリフだが、以前、次のことをある方に言われたことがある。
「新井さん、コラボアイテム好きじゃないでしょ?」
一度もそんなことを口にしていなかったのに、気づかれてしまった。ええ、まあ、その通りなんですよ。おっしゃる通りでして。僕はコラボアイテムがあんまり好きじゃない。それは、このAFFECTUSのアーカイブが物語っている。コラボアイテムをテーマにしたコラムが、ほとんどないのだ。
展示会レポートを含めると、サイトには800本近いファッションテキストが収められている。その全てを把握できているわけではないのだが(流石に覚えられなくなった)、コラボを全面的に打ち出した内容のテキストはほぼないはず。
なぜ、コラボアイテムが好きじゃないのか。いや、嫌いではないですよ。面白いなと思うことも多い。最近、近年の面白いと思ったコラボを取り上げるコラムを書こうかなと思ったぐらいなので。まあ、結局思っただけで、取り掛かっていないんだけど。
コラボの魅力というのは、別々のブランドが共同でものづくりに取り組んだ時に生まれる面白さにある。僕はその面白さがなんだか苦手なのだ。
これは僕個人の印象だということを断っておきたい。コラボによってブランドの特徴が薄まる気がして、コラボアイテムを見ると僕は薄味に感じてしまうことが多かった。その経験が重なり、コラボアイテムがどれだけ話題になっても、心が全く動かない人間になってしまった。
コラボするより、デザイナーの純度をさらに極限に究極に天元突破するぐらい濃厚に高めてくれよ、とか思ってしまうのだ。デザイナーの純度2500%の服が見たてみたい。そんなふうに思ってしまうのです。
コラボレーションが好きな人たちには怒られそうこと言っているけど。
でもね、嫌いなわけじゃないんですよ、苦手というだけで。そんな僕が熱烈にこれはいい、欲しいと思ったコラボアイテムがあった。それが「ハイク(Hyke)」と「ザ ノース フェイス(The North Face)」のコラボレーションだった。この体験は、数年前にここで書いたので、この下に貼っておくので興味のある方は読んでもらえたらと思う。
▶︎ザ・ノース・フェイスとハイクが矛盾を超える
モードは、街角で立ち上がる
→ AFFECTUS No.181(2019.12.24公開)
いやあ、驚いたね。前から歩いてきた人の着ていた黒いコートの優雅さと言ったら。
「なんだ、あれ!?」
心の中で驚嘆していたから。
実物のコラボアイテムを見ても反応が薄い僕だが、ハイクとザ ノース フェイスは違った。でも今思うと、あのコートはザ・ノース フェイスとのコラボというより、ハイクの成分が強かった気もする。それゆえの興奮だったのではないかと。あのコラボ以来、僕は興奮するコラボに出会えていない。
でも、こんなこと言っていおいて、将来コラボレーションしたアイテムを作ったら笑ってくれ。
「お前、あの時コラボ好きじゃないって言っていたじゃないか!」
その批判は甘んじて受ける。仮にコラボした時、こう言われたどうする?
「コラボレーションは…お好きですか?」
桜木花道と同じで、答えは一つだ。
「大好きです」
〈了〉