今年8月、「ズッカ(Zucca)」は2026SSシーズンから「カネマサフィル(Kanemasa Phil.)」でクリエイティブ・ディレクターを務める馬場賢吾がデザイナーに就任することを発表した。デビューコレクションはショー形式で発表され、会場はズッカを運営するエイ・ネット(A-net)の新大橋オフィスだった。
カネマサフィルの服を展示会で初めて見た時、シンプルなデザインながらも色彩とシルエットの上品な佇まいに一目で惹かれた。同ブランドをディレクションする馬場は、ズッカでどのようなコレクションを発表したのだろうか。
コレクションで最も目を奪われたのは素材。モデルたちが目の前を通り過ぎると、生地の風合いに優しさが滲んでいた。「服を着ることで、心がくつろぐ」。そんなフレーズが浮かんだ、柔らかなムードの生地は、無地を中心に、使用感のある味わい深い表情、光沢、ドレープ性、フェード感、ペイズリーやドットなどの柄、そして合繊素材も用いて、新しいズッカを朗らかに多様に彩る。
アイテムは日常着としてリアルなフォルムをベースに制作。シャツ、トップス、テーラードジャケット、パンツ、スカート。いずれのアイテムの形にも“ゆらぎ”が入っていた。服が体の上で浮遊しているように、モデルたちの姿は優雅だった。いや、優雅という表現はちょっと贅沢により過ぎだろう。より日常に根差した、カジュアルなゆらぎであり、洗いざらしの白いオーバーサイズシャツをTシャツ上から羽織り、フロントボタンを留めずに街を歩くようなリラックス感である。
印象的だったアイテムはトラックスーツ。スポーティな服の王道アイテムだが、素材はとろみのある生地を用いて、ドレスに通じる雰囲気を纏っていた。カジュアルな要素の強いアイテムを、エレガントな要素の強い素材で仕立てる。日常のバランスを組み替える手腕が光った。
色彩は明るいが鮮やかさよりも優しさを重視したトーンで、スタイルにマッチしていた。透け感のある素材を使用し、視覚的に軽さを演出するアプローチも特徴的だった。
カジュアルの軽快とドレスの気品、両方の領域を自由に行き来して生まれたような服が、ズッカのデビューコレクションを飾った。
Official Website:zucca.cc
Instagram:@zucca_official