AFFECTUS No.702
ファッションが読まれる #9
2026AWシーズンが開幕し、改めて感じたのは細いシルエットの進行だった。数としてはトレンドを埋めるというほどではない。だが、「プラダ(Prada)」「ディオール(Dior)」という影響力の大きいブランドが積極的にスリムな服を発表している。増えていく細いシルエットを見ているとある疑問が浮かんできた。それが、今回のタイトルだった。
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ビッグシルエットが浸透して10年以上が経過した。ボリュームのある服に慣れきった身体が、果たして本当に細いシルエットを「着たい」となるのだろうか。ビッグシルエットには中毒性があった。ボディラインを曖昧にし、身体に自由な動きをもたらす。この軽やかな着心地に慣れた現代人が、コレクションシーンのトレンドに浮上したからといってスリムな服に手が伸びるだろうか。
「なんか、けっこう、難しそうだな……」
と思い始めている。
人間は慣れ親しんだものをなかなか手放せない。特に身体に関わることになると、なおさらだ。お酒、甘いもの、ハイカロリーな食事。摂取量は気をつけなくてはならない。しかし、美味しいと思ったら、健康によくないと思っても、身体は抗えない。人間の身体はそんな構造になっているように思える。DNAに設計として組みこまれているんじゃないか。そう感じるほどだ。
ビッグシルエットは美味しい食事だった。人間の身体にとって。
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細い服にも良さはある。最近、スリムなパンツを穿く機会を増やしている。元々、ビッグシルエットよりも好きな形というのもある。ミニマリズムが人気だった時代を体験してきたために、細い服に惹かれる。ビッグシルエットは確かに身体の締め付けがなくて動きやすい。一方で、細い服を着る時代が長かったためか、ビッグシルエットは布が身体にまとわりつく感覚があった。量感のある服を着てから細い服を着ると、腕が袖と一体化しているような感覚を覚え、動きやすく感じる。脚も同様だ。スリムなパンツは脚の動きが滑らかに感じる。スッ、スッと左右の脚が進む感覚と言ったらいいか。
大きな服に慣れると身体が緩んでしまう気もした。細い服を着ていると、身体が締まる感覚になる。現在の市場は、ウェストにゴムを使用するボトムが増えた。展示会を訪れていても、明らかにウエストのゴム仕様が増加している。僕は部屋着は別として、外出時のパンツにゴムを使用したウェストは穿かない。ウエストが楽になってしまう感覚が嫌なのだ。一貫して硬いウエストを好んで穿いている。
細いシルエットが、ビッグトレンドになる気配は今のところない。でも、もし今までビッグシルエットばかり着てきた人がいるなら、試しに細い服を着てみて欲しい。思わぬ良さがに気づくかもしれないから。もちろん、良さを感じない可能性はあるだろう。
しかし、食べず嫌いという言葉があるように、ファッションにも着たことないのに嫌いという現象はある。着てみたら「あれ、これ、ありだ」となる。そんな体験をしたら、新しい楽しみの誕生だ。服を着る楽しみは、一つより二つの方がいい。いくつあってもいい。
細いシルエットは受け入れられるだろうか。そのことが、ファッションウィークでどんなコレクションが発表されるかよりも気になっている。
〈了〉
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