Exhibition: Ssstein 2026SS

30度を超える日が、もう何日続いているのか分からない。改札を抜けて歩き始めたとき、雨に気づいた。しかし、傘をさしても、ささなくてもいい程度の雨。だが、広げる傘を持っていなかった。濡れることを避けたくて購入。そこから坂道を上る。なだらかな、けれど、じわじわと体力を奪う傾斜だった。

「シュタイン(Ssstein)」の2026SS展示会が開催されるビルに到着。傘を畳み、エレベーターで地下に降りる。会場には、冷えた空気が漂っていた。その涼しさに、安心する。静かな場所。服が発している気配のようなものを、服を見る前から肌に感じる。

最初に目に入ったのは、ロングコートだった。シュタインの展示会を訪れると最初に見るアイテムは、いつもコートだった。一目で驚くフォルムや鮮烈な色彩があるわけではない。ただ、そこに「ある」。その静かな存在感が心地いいアウターだ。

ブランドの代名詞でもあるジーンズは、トラウザーズと表現したくなるシルエット。緩やかにかたちづくられた輪郭は、脚に立体的な美しさを宿らせる。

ラックに掛かる服を一点一点手に取っていくと、ウールのパンツを見つける。ハリのある素材で仕立てられていた。立体感が際立つ。脚に沿うのではなく、脚のまわりに空気をつくるようなシルエット。見た目以上に、静かに主張するボトムスだった。

さらに奥へと進むと、シャツに出会う。ここ数年、シュタインの展示会でシャツに惹かれる自分がいる。今回は、ブラウンのチェック柄が目に留まった。シュタインでチェック柄というのは、あまり記憶にない。柄は穏やかで、触れてみると、指先が喜ぶような質感。

そのとき穿いていたのは、チャコールグレーのサマーウールのパンツだった。ふと、鏡の中で合わせてみたくなった。ブラウンとグレー。ふたつの静かな色が、互いを際立たせる。小さな発見に、物欲がくすぶるように芽を出す。

並ぶシャツのなかで、一際存在感を放っていたのがスキッパータイプのシリーズ。中でも気になったのは、色褪せたようなパープルの一着。たしかナイロン混だったと思う。ハリがあるのに、滑らかさもある。直線と曲線が、静かに並び合っているようだった。

展示会では毎回、ニットにも触れるようにしている。というより、自然と手が伸びてしまう。触れていると、やわらかい気持ちになる。カシミヤの軽さ、編み地の薄さが、素材の存在感をかえって浮かび上がらせていた。そういえば、今回のルックでは、ニットを重ねていた。服としての軽さが成立させているのだろう。ニットは今シーズン、明るく、やわらかい色が挟み込まれていた。それが、シックなトーンのコレクションに彩りを添える。

今日いちばん、心を動かされたのはこのブルゾンだった。

袖も身頃も、ふんだんなボリュームを含んでいる。着用すると、オーバーサイズのシルエットが静かに広がる。だが、だらしなさやストリート的な緩さはどこにもない。ワイドな造形は、むしろ端正で、背筋の伸びた空気をまとう。テーラードジャケットの品格を思わせた。

思わず、姿勢を正してしまう。本当にいいブルゾンだった。

シュタインの服は、ラックにかかっているあいだ、感情を抑えているように見える。だが、袖を通すと、その服のなかに潜んでいた「感情」が目を覚ます。自分の身体と重なったとき、服は、ようやく語り始める。そして、その声に抗うことは難しい。今日、袖を通したブルゾンがそうだったように。静けさが、ただの無音ではなく意味を持ったとき、シュタインの服は完成する。

遠くない未来、きっとパリ ファッションウィークの公式スケジュールに名を連ねるだろう。それが目的ではないにしても。

シュタインというブランドは、言葉にならない敬意のようなものを、静かに、たしかに届けてくる。この服たちは、叫ばない。だが、それでも、こちらの心に触れてくる。

Official Website:ssstein.com
Instagram:@ssstein_design