1998年、ロンドン東部で設立された「サイラス(Silas)」。このブランドの名前に懐かしさを覚える人たちもきっといるだろう。英国のストリートウェアは、元「アフィックスワークス(Affxwrks)」のタロウ・レイ(Taro Ray)をクリエイティブ・ディレクターに迎え、サイラス本国企画(UK)を2026SSシーズンから始動する。
レイが手がけるファーストコレクションは、ブリティッシュトラッドとストリートのエッセンスが混じり合う。褪せたイエローのTシャツの上にアーガル柄ベストを重ね、その上からライトブルーのシャツを羽織る。フロントボタンは留めず、さらっと着る。ボトムで目を引くのがジーンズ。シルエットは脚に張り付くスキニーで、フェードしたデニムパンツは左大腿部にパッチワークが見られる。ジーンズだけでなく、シャツやTシャツ、ブルゾンは細身の形で構成されている。アクセントとして、ワイドなデニム製カーゴパンツ、肩先がドロップしたフード付きワークブルゾンなど、量感を取ったフォルムが投入されている。
だが、コレクション全体はスマートな印象が支配していた。肩幅がジャストのロゴTシャツ、袖丈と着丈が短かく、上半身にフィットするポロシャツを、細いジーンズに合わせたスタイルは1990年代ファッションが蘇り、「トレインスポッティング」のユアン・マクレガーが思い出されてきた。
ルックも淡いトーンが滲む。これをノスタルジーと言うのだろう。だけど、サイラスを懐かしむ人たちにとって、ノスタルジーと呼べるほど、あの時代は遠くないのではないか。そして、サイラスを初めて体験する人たちにとって、長らく時代を支配してきたオーバーサイズを経た後のファッションとして、どう映るのだろうか。
気だるく儚げなストリートウェアが今、ロンドンから始まる。
Instagram:@silas