昨年、「ヨーク(Yoke)」は「FASHION PRIZE OF TOKYO 2026」を受賞した。今年1月にはパリで2026AWコレクションをランウェイ形式で発表。そして楽天ファッション・ウィーク東京2026AWの初日、凱旋ショーを開催する。会場は渋谷ヒカリエ。パリではメンズモデルのみで構成されていたが、東京ではウィメンズモデルのみでショーが行われた。2026AWシーズンから新たにスタートするウィメンズラインの披露でもあった。
毎シーズン、一人のアーティストに焦点を当てるヨーク。2026AWで取り上げたのは、シュルレアリスムを代表する彫刻家・画家ジャン・アルプ(Jean Arp)だ。アルプは「自然界に直線はない」という言葉を残している。デザイナーの寺田典夫はその思想を手がかりに、「BEYOND FORM」をコレクションテーマに掲げた。
直線とは単なる線ではない。そこには形としての直線という具象と同時に、「硬さ」という感覚的な抽象性が含まれている。今回のコレクションは、その二つを崩すようにデザインされていた。
まず崩されたのは直線の具象性だ。自然界に直線はない。その発想を反転させるように、服の中には曲線が差し込まれる。カーディガンの前立ては波打つように揺れるものもあれば、首元から脇に向かって斜めに走るものもある。ワイヤーを仕込んだアイテムは、布地が有機的に形を変える。曲線が直線を侵食するように、服の輪郭が大きく揺らいでいた。
一方で、直線の抽象性──つまり「硬さ」も取り除かれている。それを担っていたのが色と素材だ。アルプが自然から多くの影響を受けていたことを踏まえ、コレクションはウール、コットン、レザーといった自然素材を中心に構成される。色はグレー、ブラウン、ベージュ。柔らかなトーンの中で、素材は身体の動きに合わせて静かに揺れる。直線の持つ冷たい緊張感は、柔らかな質感によって中和されていた。
「硬さ」を取り除く試みは、スタイリングにも表れていた。コートやジャケットの多くはウエストをコードで絞る着こなし。重厚に見えるアウターが、着物のような軽やかな装いに変わる。直線的な構造を持つ服が、身体の動きによって緩やかに形を変えていく。
コレクションテーマを最も象徴していたのはボトムだろう。メンズのトラウザーズに見えるが、ラップスカートの構造を取り入れ、スカートとして穿いているようなシルエットになっている。メンズにおいてパンツはスタイルの骨格とも言える存在だ。その骨格を解体し、寺田は服の「造形」だけでなく、「概念」にも揺らぎを与える。そしてそのボトムに、曲線を持つ女性の身体が配置され、ウィメンズのアイテムとして提示された。直線の具象性と抽象性は、ここで同時に崩されていた。
これらのアプローチが、ベーシックウェアの上で展開された点も興味深い。かつてコンセプチュアルな服作りは、前衛的な造形によって示されることが多かった。しかし今回は、コートやジャケットといった日常のワードローブの上で、形と意味がわずかに揺らされる。概念は特別な造形の中ではなく、ベーシックウェアの内部に差し込まれる。ヨークが示したのは、そのような現代的な服作りの方法だった。
ショーのフィナーレ映像 → Instagram
Official Website:yoketokyo.com
Instagram:@yoke_tokyo