マルニ創業一家の新しい挑戦

AFFECTUS No.90

ロンドンコレクションが終わり、2019SSコレクションサーキットはミラノへ。グッチがパリに発表の場を移し、ミラノの存在感がますます薄れると感じていたが、ビッグスターが去ればニュースターが現れるのが世の常。

その時代の習わしが証明するように、ミラノにニューブランドがデビューした。ブランドネームは「Plan C(プランシー)」。ウィメンズウェアのブランドだ。

僕はコレクションを見て、一目で惹き込まれる。最初僕が目にしたのは、女性らしいニュアンスのソフトでスリムなラインを特徴としたルックだった。赤いクルーネックの半袖ニットをスカートにインした、とても上品なスタイル。しかし、淑女スタイルにとどまる上品さではない。

ニットは赤をメインカラーにしながらも、ネックは黒で切り替えられ、ボディにはアームホール底から中心に向かって斜めのラインが入り、その下からは色が茶色に切り替わる。上から黒・赤・茶と色が切り替わるグラフィカルな要素は、スカートにも続く。

一見すると膝丈のプリーツスカート。しかし、ここでも大胆なグラフィカルが目を惹く。スカートの中央には茶色、そのサイドにはライトなトーンのピンクが使われた、茶とピンクのコンビネーションカラースカート。モダニティ溢れるデザイン要素に、プリーツスカートというレディなムードのミックス。

すると、ここにダイナミズムが生まれだす。その根源はビッグフォルムだ。ボリューミーに量感を取り、直線的にカットしたアウターは、服を一気に勢いよく着た時の一瞬のカッコよさをシューティングしたかのようだ。その姿には、メンズウェアに通じるダイナミズムがにじむ。

しかもユーモアが、ほんのりと隠し味にある。ビッグフォルムのネイビーのスウェットの前身頃中心には、子供が色鉛筆で落書きしたようなグラフィックがプリントされ、クスッとした笑いを誘う。かつ、このルックのボトムには直線的カットのグリーンのスカートがスタイリングされ、全体のクールな佇まいと子供の落書き調プリントが、シリアスでありながらユーモアを演出するという不思議なニュアンスを生み出している。

茶色に赤・青・緑・黄・ピンクの色をグラフィカルに組み合わせ、ダイナミズム&シャープなビッグフォルムで、メンズウェアなウィメンズウェアを作るのがPlan Cの特徴だ。

先ほどから、僕はビッグシルエットではなくビッグフォルムという表現を使っている。これは僕の個人的な使い方なのだが、「シルエット」という言葉を服のアウトライン、服の外郭を指す際に用いる。それに対して「フォルム」は、服のアウトラインにボリュームを加えたもの、服の外郭と量感を合わせて見る際に用いる。

つまり「シルエット」が2Dなのに対して、「フォルム」は3Dと言える。

Plan Cを見ていると、ビッグシルエットではなくビッグフォルムと呼ぶほうがふさわしいと思えたのだ。服のアウトラインだけでなくボリューム、そのボリュームを細部まで考え、けれど複雑に表現するのではなくシンプルに作り上げ迫力を生み出している。

ルックを見ていると、そのブランドの姿勢が如実にわかる。前からだけでなく、横と後ろからモデルを写した写真が多い。モデルのポーズもバラエティに富んでいる。つまりシルエットではなくフォルムに、ブランドのアイデンティティがあるとの自覚だろう。

決して時代を変革するような革新的デザインではない。つまり僕が言うところのカウンター型のデザインではないが、現代ファッションのトレンド=コンテクストを集約しながら、自らのアイデンティティ=ビッグフォルムとグラフィカルな色使いを通して、シンプルに綺麗にまとめ上げたスタイルのフォロー型デザインと呼べる。しかも、モダニティが強いフォロー型デザインだ。

突如デビューしたPlan Cの事前情報が全くなかった僕は、すぐに調べ始めた。すると驚いた。デザイナーが、マルニの創業デザイナー、コンスエロ・カスティリオーニの娘だったのだ。

娘の名前は、カロリーナ・カスティリオーニ。それだけじゃない。このPlan Cにはカスティリオーニ家がバックアップしているのだ。カロリーナの父であるジャンニ・カスティリオーニがCEOを務め、カロリーナの兄弟のジョバンニ・カスティリオーニがオペレーション・ディレクターを務めている。

マルニの創業家であるカスティリオーニ家は、2016年にマルニを去っている。マルニ創業一家は、娘を柱にして新しいチャレンジを始めた。

現マルニのディレクター、フランチェスコ・リッソのデザインするマルニは、リッソの独自性がかなり強まり、従来のマルニファンから見ればフィーリングの不一致を感じるだろう。

そんな中でのカスティリオーニ家によるニューブランドのデビュー。魅力あふれるストーリーだ。

しかし、Plan Cは決して従来のマルニを踏襲したデザインではない。懐かしさを再現させているわけではない。マルニとは異なるスタイルを持った新ブランドだ。カロリーナ・カスティリオーニは自らのビジョンを、デビューコレクションで堂々と披露した。

マルニ創業一家の新しい挑戦が、今始まる。

〈了〉

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