アミリは、本物のストリートウェアとは何かと問う

AFFECTUS No.398

ショーのBGMは生演奏だった。ステージに立つのはDJ プレミア(DJ Premier)と、彼のライブバンドとしても活動するザ・バダーバンド(The Badder Band)。まずはキーボードの清らかな音が静かにゆっくりと鳴り響き、次第にドラムやギターが奏でる音と合流していく。そして演奏に重層的サウンドが聴こえ始めた瞬間、会場全体にライトが灯り、「アミリ(Amiri)」2023AWコレクションのショーが幕を開ける。

ファーストルックに登場したのは、ブラックウェアが主役のスタイル。黒いブルゾンにルーズシルエットの黒いパンツ、足元には白いスニーカー。ブルゾンのフロント胸部には、白いダイヤモンドチェックが黒い生地の上に規則正しくプリントされていた。ランウェイを歩くモデルから立ち上がるのはヒッポホップな空気で、このムードこそ、今回のアミリの主役だ。

セカンドルックはファーストルック以上に、ブラックカラーがスタイルを支配する。トップスとパンツの黒い生地は煌びやかで、その輝きはダンスフロアのように眩しく、モデルはシャツの上からピークドラペルのロングコートを羽織っている。ミュージックとクラシック、一見すると遠く距離が離れているように見えるテイストの服が、一つのスタイルとなって極上の光を放つ。

心地よい生のサウンドと共に、円形のランウェイを歩くモデルたちの服は、音楽性がこれでもかとあふれているが、スタイルから滲み出るのは上品で渋いエレガンス。アミリのデザイナー、マイク・アミリ(MIke Amir)は布地で音を奏で、ファッション伝統の美しさを私たちに伝えていく。

シャツの上からクルーネックのニットを着る、シャツの上からカーディガンを着る、シャツの上からジャケットを着る。2023AWコレクションに登場するルックは、メンズウェア伝統の着こなしばかり。だが、端正なシルエットで作られるはずの服を、アミリは崩す。

トラッドなブルゾンやコート、パンツは、身体の上で布が泳ぐルーズシルエットで作られている。このシルエットこそが、クラシックスタイルにヒッポホップムードを生み出す要因になっていた。そしてもう一つ、ささやかだけれどもアクセントになっていたのが、ニットの裾からシャツの裾を出すスタイリングだ。このカジュアルな着こなし一つで、伝統のファッションが持つ厳かさを崩していたのは見事だった。単純で見慣れたはずのアイデアであっても、使い方次第でいつでも大胆さは創造できるのだ。

そして、今コレクション最大の注目だったと言ってもよい素材が、ショーの中盤で現れる。抽象絵画のアートを眺めているようなグラフィックが、シャツやパンツの素材として用いられていた。ベージュ、ブラック、ブラウンカラーの液体が、壁の上から下に向かって流れていく。あるいは、異なる色の水が流れる川を上空から撮影した。そんな風景を連想させる液体的流動性を備えたグラフィックが、ステージをダイナミックに彩る。

では、それらのグラフィックが繊細な麗しい外観の柄なのかというと異なる。一本一本の流れは太く、煌びやかに輝き、ハンドペイントしたように荒々しく力強い。ヒップホップなムードと、抽象絵画的アートなムードが、カジュアルとクラシックを混ぜ合わせたスタイルの中で表現され、このミックス感が実にパワフルだ。

ベルトルックを一つ挙げるとすれば、46番目に登場したルックになる。足首にまで着丈が達するシックなテーラードロングコートに合わせたのは、アートな空気に満ちた素材のルーズシルエットのシャツ&パンツ。世の中のあらゆるエレガンスを混ぜてしまう。これこそが、本物のストリートウェアなのではないだろうか。

生演奏のBGMは、DJプレミアのミキシングと、トランペットの音色が混じり合い、心地よいサウンドを流していた。ショーのフィナーレは、円形のランウェイをモデル全員で回っていく演出で終わりを迎える。

2023AWコレクションは、アミリのベストコレクション。そう述べることが決して大袈裟ではない、見事なクオリティだ。このテキストを書いている時点で、パリメンズコレクションの発表はまだ続いているが、現時点では、私にとってパリメンズのベストコレクションだと言える。このコレクションのクオリティを持ってすれば、現在不在の「ルイ ヴィトン(Louis Vuitton)」メンズディレクターも十分に務まるのではないか。そう思わずにはいられない、マイク・アミリのクリエイティビティだ。

非常に心地よいコレクションに出会えた。だからモードはやめられない。

〈了〉

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