メタ カンパーニャ コレクティブと過ごすスローライフ

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AFFECTUS No.493

「ファッションにこだわる」とは、一般的には最新シーズンが訪れるたびに、最新アイテムを購入して着こなすことを言うのかもしれない。ただ、ファッションに魅了されて四半世紀近くが経ち、ファッションのこだわり方にも様々な方法があるのだと気づく。たとえば、次のような例もあるだろう。

新しい服を買うにしても、気に入ったニットやTシャツならば色違いで何着か欲しくなってしまう。パンツもお気に入りのシルエットと出会えたら、色違いで2本揃えたくなる。スニーカーに関していえば、履き潰してしまったら、同じブランドの同じ型を購入することが多かった。新しい服を買っているにも関わらず、馴染みある服を買う安心感が心地よい。

このようなこだわりは、ファッションというよりユニフォームに近いのかも知れない。ファッションのユニフォーム的側面にフォーカスするブランドが、「メタ カンパーニャ クラブ(Meta Campania Collective)」(以下、メタ)だ。

2020年設立とまだ若いブランドのメタは、コレクションに奇抜な側面は見られない。ブランドにインスピレーションを与えるのは、アーティストが服を着て、生活をし、仕事をする際の慎重な無頓着さだった。「慎重な無頓着さ」とは何を意味するのかと、しばし考え込んでしまう。すぐに答えが出るものではないだろうし、正直言うと、私がメタのコレクションに惹かれたのは、そこではなかったので考えることをやめた。

メタのコレクションは、シンプルなデザインでクリーンな印象を受ける。2023年3月に発表された“Season 4”というタイトルのコレクションは、ワークブルゾン、ダブルのテーラードジャケット、太番手のカーディガン、白いシャツと、メンズのベーシックアイテムで構成されており、一つひとつのアイテムは造形的にもシンプルだ。素材もデニムやコーデュロイなど、定番素材が使われている。

色使いは、渋いトーンのオリーブ、柔らかなトーンのホワイト、ヴィンテージな空気感のブラウンが採用され、オーソドックスで地味な印象を抱く。

メタの服はシンプルでクリーンなのだが、トレンドのクワイエットラグジュアリーのような上質感、高級感は感じられない。「洗練された作業着」といった趣だ。綺麗な服として作られてはいるが、野暮ったさが滲む。

昨年6月に発表された“Season 5”は、ブラック&ホワイトの幾何学柄アウターやオフホワイトのレースがシャツの素材に使われているため、Season 4よりもデザインが大胆だが、それでもシンプルな枠に収めていいコレクションだ。春夏の服らしく、ベージュとライトブルー、特にベージュが多用されているので、非常に軽やかな印象だ。

そうは言っても、やはりどこか野暮ったさが匂う。

その理由はシルエットにあるように思えてならない。細くも太くもないシルエットは、オーバーサイズと呼ぶのがふさわしい輪郭。ルックに起用したモデルの年齢層が高いせいだろうか、私は悲哀を感じてしまう。

若いころはスリムなシルエットが好きだったが、年齢を重ねるたびに体重が増加し、体型も変化し、昔は着用できたシルエットに抵抗が出てくる。若いころとは変わった体型を曖昧にするためのオーバーサイズシルエット。体重が戻らなくなってきた現在の私自身も実感する、そんな悲哀のシルエットをメタのコレクションに感じるのだ。

そんな感覚を、クリーンな空気感で仕立ててくれるのがメタだった。斬新なデザイン性とは距離を置き、ワークウェアのテイストも感じるため、メタの服には野暮ったさが漂っているのだろう。なんだかネガティブな思いを優しく肯定されている気分になってしまう。

「過去の自分に、無理して戻ろうとしなくていい。今のままでいい。現在の自分を愛そう」

そんな優しくされたら、明日の昼食は家系ラーメンを食べて、夕食にはビーフカレーを食べてしまいそうだ。運動?いやあ、疲れるから遠慮するよ。

ユニフォームには安心感がある。服が行動を規範してくれる。最新スタイルを常に捉えるファッション体験とは違うファッション体験があっていいし、スローなファッション体験を求めたくなる時期はやってきたなら、じっくりと味わおうじゃないか。その時はメタ カンパーニャ コレクティブという名の仲間と一緒に。

〈了〉

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