チョポヴァ・ロウェナは規律を破壊するパンクウェア

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AFFECTUS No.558

セントラル セント マーチンズ(Central Saint Martins)のMA(修士)過程の卒業コレクションで、エマ・チョポヴァ(Emma Chopova)とローラ・ロウェナ(Laura Lowena)は協力して製作に臨む。在学中のコラボレーションがきっかけとなり、パンク&ノスタルジックな「チョポヴァ ロウェナ(Chopova Lowena)」が誕生した。現在ブランドは、ロンドン ファッションウィークで発表しており、ブルガリアの民族衣装とロッククライミング ギアが融合したデザインが基盤にある。完璧に領域の異なるファッションを、強引と言ってもいい形で結びつけるコレクションは、前回の「ユハン ワン(Yuhan Wang)」に通じるデザインだ。

ヴィクトリア時代の「ワイルド・ウェスト(Wild West)」を生きた女性たちからインスパイされた2025SSコレクションは、パワフルかつデコラティブ。「チョポヴァ ロウェナ」のエネルギーが凝縮されたデザインだった。ルックには様々な時代の様々な服のディテールが混じり合う。パフスリーブの黒いブラウスは前立てにボタンが細かく並び、フリルが波打つ裾は、18世紀の英国の女性たちが着用していた婦人服のように装飾的。

女性の下着、ラウンドカラーの白いシャツ、ジーンズ、バルーンスカート、時代も性別も多種多様な服が次から次へと登場し、いずれのアイテムもギャザーが激しく寄せられていたり、スパンコールが大量に取り付けられたりと、これでもかと飾り立てられている。もちろん生地自体も装飾的で、チェック生地、花や蝶を写した柄、子どもの落書きのようにカラフルな絵、爬虫類を模した柄と、素材も穏やかではない。

起用されたモデルは女性と男性が一緒に登場するだけでなく、年齢も体型も様々。男性モデルがチェック柄のフレアスカートを穿いていると思えば、女性モデルは子供服のドレスと同様のラブリーなミニドレスを着用していた。フレアスカートを穿き、フードを被った女性モデルたちを見ていると、グリム童話「赤ずきん」の少女が頭の中をよぎる。想像はどこまでも膨らむ。

スカートとパンツが一体化したアイテムもあり、服の境界も溶けていく。混沌とした様子は、規律と束縛を嫌うストリートウェアそのもの。「チョポヴァ ロウェナ」にルールは存在しない。人間の想像力を解放する。

「自分たちの服をすべての人たちに楽しんでもらいたい」

コレクションからは二人のデザイナーの声が聞こえてくる。そう思えるほど、2025SSコレクションはパーティー的賑やかさを発散していたのだ。

最高峰の原料で最高に上質な生地を開発し、その生地を使ってシンプルなシルエットの服を作る。そんな服づくりも価値はあるが、強烈な渇きを潤すエネルギーに満ちた服もファッションには必要だ。ヴィヴィアン・ウェストウッド(Vivienne Westwood)やアレキサンダー・マックイーン(Alexander McQueen)が表現してきた、ロンドン伝統のパンクマインドは二人のデザイナーの魂に刻まれている。2025SSシーズンのロンドン ファッションウィークで最もアナーキーな魅力を放っていたのは、「チョポヴァ ロウェナ」で間違いない。

見るものすべてを一つにする。ハーモニーやバランスなど知ったことではない。調和や均衡は破壊してこそ。エマ・チョポヴァとローラ・ロウェナは、ガーリー&パンクな服装でファッションの伝統と歴史を打ち破っていく。

〈了〉

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