注目のミニマリズム派 #4 「トーテム」エリン・クリング&カール・リンドマン

AFFECTUS No.650
デザイナーを読む | 注目のミニマリズム派 #4
トーテム|エリン・クリング&カール・リンドマン

ミニマリズムを標榜するブランドは数多いが、その内実は一枚岩ではない。2014年、エリン・クリング(Elin Kling)とカール・リンドマン(Karl Lindman)がストックホルムで立ち上げたトーテム(Toteme)が示すのは、生活に沈むような均整のあり方である。

▶︎注目のミニマリズム派 #3 冷たく温かく、エイトン久﨑康晴の美学
冷静なシルエットに、素材の温度が重ねられている。

トーテムの服を見ていると、まず直線が支配していることに気づく。布は極力まっすぐにカットされ、体の曲線をなぞるのではなく、消去する方向へと導かれている。女性の身体性を強調するでも隠すでもなく、ただ直線の秩序へと置き換えてしまう。そのため、時にモデルの姿から性別が判然としない瞬間すらある。これは装飾性や身体の象徴を消去する試みであり、ウィメンズウェアに長く付随してきた伝統的なコードを一度は無効化する態度である。

しかし同時に、トーテムは決して女性性を完全に排してはいない。コレクションにはスリムなドレスが少なからず含まれ、体を拾うラインが残されている。直線に覆われた均整の中に、あえて曲線が差し込まれる。そのさじ加減が示すのは、女性性の全否定ではなく、むしろ「現実に即した残存」と言えるだろう。メンズライクな装いを求めつつも、ドレスに手を伸ばす欲望がある。そのリアリティを認めた上で、「消す」と「残す」を往復させる。ここにトーテム独自のバランスがある。

▶︎フィービー・ファイロのクロエは大人ガーリーの頂点
フェミニンを徹底して引き上げた、その希少な時代を振り返る。

色彩はモノクロームやベージュといった無彩色を基調とし、装飾は極端に削ぎ落とされている。だがそこにはラグジュアリー特有の贅沢さはない。確かに見た目は上質だ。しかし、それが最高級に感じられるかというと、それもまた違う。素材の光沢やシルエットの柔らかさで女性性を高揚させる方向にも行かない。むしろその簡潔さは、日常に沈み込む秩序として存在している。言い換えれば、トーテムの服は特別な場面のための衣装ではなく、日常を支えるためのユニフォームである。

この思想は価格帯にも表れている。ラグジュアリーに属さない一方で、大衆消費の枠にも収まらない。日本円で5万円から10万円台のアイテムが多く、「手が届かない高み」でもなく「消耗される日常」でもない、あいだの領域を築き上げている。この絶妙なレンジは、消費行為に意志を要請する。衝動的な購入ではなく、ワードローブに迎え入れる選択としての買い物。ここにブランドの戦略と美学は一致している。

要するにトーテムは、女性性を消去しながらも完全には手放さず、装飾を削ぎながらも禁欲には陥らない。直線による均整と、残存する曲線。その狭間に「日常を支える美」が立ち上がる。ミニマリズムを権威化することも、究極化することもせず、あくまで生活に沈む秩序として提示する。そこにトーテムの独自性がある。

〈了〉

▶︎純白すぎるほど純白のロイシン ピアス
非日常のメルヘンを、徹底して装飾に託した白い服。