展示会レポート
Children of the discordance 2023AW

まるでストリートのグラフィティを眼前にしているような迫力は、2023AWコレクションでも健在だった「チルドレン オブ ザ ディスコーダンス(Children of the discordance)」(以下、COTD)。実際に服を手に取ってみると、周囲をスケーターたちに囲まれたような気分になるのは錯覚だろうか。もちろん、それは錯覚だ。しかし、それほどのリアリティとダイナミズムを感じさせるのがCOTDだ。

民族テイストのテキスタイルをパッチワークしたデザインもCOTDの特徴。荒々しく、粗野な外観が目を惹きつけ、服をいつまでも鑑賞したい気分にさせる。また、和のテイストをグラフイカルに、あるいはディテールとしてストリートウェアと融合させるデザインも見逃せない。

以上のデザインは、これまで訪れたCOTDの展示会でも感じられてきたブランドの象徴だ。しかし、今回の2023AWコレクションでは、私は過去の展示会とは違う新しさを感じた。服の洗練度が増しているように思えたのだ。とは言っても、重厚なクラシックウェアや、クールなミニマリズムとは違う、パワフルな装飾性を維持したまま、服の持つムードが一段格上に洗練された印象である。

それを実感したのは、デコラティブなデザインが施されていない、あるいは最小限に留められたアイテムを見た時だった。

ワークウェアやアウトドアウェアのようなテイストを備え、古着屋を訪れた時に、偶然に発見した上質なコンディションと褪せないデザインのニットやコートといった趣である。私が思うに、デザイナーの志鎌英明は、ミニマリズムの服を作ったとしても、かなり魅力的なアイテムを完成させる力量を備えているだろう。そう思わせるほど、2023AWコレクションは以前よりも洗練度が高まっていた。

2010年代中盤から爆発的な人気となったストリートウェアは、一時の勢いが沈静化したとはいえ、トレンドの枠を超えてファッション界普遍のスタイルとなっている。数多のストリートウェアが登場したが、COTDのコレクションから感じるのは圧力。本物のストリートウェアとは、この服のことを言うのではないか。そう称したいパワーが、COTDには宿っている。

世界の常識に縛られたくないなら、COTDを着て街へ飛び出そう。若者たちが、力強く逞しく、東京の高層ビル群を駆け抜けていく。

〈了〉

Official Website:childrenofthediscordance.com

Instagram:@children_of_the_discordance

 

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